[行列解析3.2.P37]半収束行列の条件と極限行列の公式

3.標準形と三角因子分解

3.2.P37

3.2問題37

行列 \( A \in M_n \) が半収束 (semiconvergent) であるとは、\(\lim_{k \to \infty} A^k\) が存在することをいう。

(a) \( A \) が半収束であるのは、スペクトル半径 \( \rho(A) \leq 1 \) かつ \( | \lambda | = 1 \) となる固有値 \( \lambda \) が存在するならば、それが \( \lambda = 1 \) かつ半単純 (semisimple) である場合に限ることを説明せよ。

(b) もし \( A \in M_n \) が半収束ならば、

\lim_{k \to \infty} A^k = I - (I - A)(I - A)^D

であることを示せ。

ヒント

行列 \( A \) が半収束であるとは \( \lim_{k\to\infty}A^k \) が存在することである。ジョルダン標準形を用いると、行列のべき乗の挙動は固有値の絶対値によって決まる。

固有値 \( \lambda \) が \( |\lambda| \lt 1 \) の場合、そのジョルダンブロックのべきは 0 に収束する。一方 \( |\lambda| \gt 1 \) なら発散する。また \( |\lambda|=1 \) の場合にはジョルダンブロックの大きさが 1 でなければ極限は存在しない。

(b) では \( I-A \) の Drazin 逆行列 \( (I-A)^D \) を用いる。固有空間の分解を用いると、極限行列が固有値 1 に対応する部分空間への射影であることが分かる。

解答例

(a) \( A \in M_n \) が半収束であるとは \( \lim_{k\to\infty}A^k \) が存在することである。

行列 \( A \) をジョルダン標準形に相似変換する。すなわちある可逆行列 \( S \) が存在して

A = SJS^{-1}

と書ける。ただし \( J \) はジョルダン標準形である。このとき

A^k = SJ^kS^{-1}

であるから、極限の存在は \( J^k \) の極限の存在と同値である。

ジョルダンブロック \( J_m(\lambda) \) のべきは

J_m(\lambda)^k =
\lambda^k
\begin{bmatrix}
1 & k & \cdots \\
0 & 1 & \cdots \\
\vdots & & \ddots
\end{bmatrix}

の形になる。

したがって \( |\lambda|\lt 1 \) のときは \( \lambda^k \to 0 \) であるから、このブロックは 0 に収束する。

一方 \( |\lambda|\gt 1 \) ならば \( \lambda^k \) は発散するため、極限は存在しない。よって \( \rho(A)\le 1 \) が必要である。

さらに \( |\lambda|=1 \) の場合、もしジョルダンブロックの大きさが 2 以上であれば、上三角部分に \( k \) が現れるため極限は存在しない。したがってこの場合のブロックは 1 次でなければならない。

また \( \lambda\neq 1 \) で \( |\lambda|=1 \) のときは \( \lambda^k \) が振動して極限が存在しない。したがって単位円上の固有値は \( \lambda=1 \) のみである必要がある。

以上より、\( A \) が半収束であるための必要十分条件は \( \rho(A)\le 1 \) かつ \( |\lambda|=1 \) の固有値が存在するならばそれは \( \lambda=1 \) であり、しかも半単純であることである。

(b) \( A \) が半収束であると仮定する。(a) より、固有値 1 は半単純であり、それ以外の固有値はすべて絶対値が 1 未満である。

したがって空間は固有値 1 に対応する部分空間と、それ以外の固有値に対応する部分空間に分解される。

このとき \( A^k \) の極限は、固有値 1 の固有空間への射影行列になる。

一方、Drazin 逆行列の性質より \( I-A \) に対して

(I-A)(I-A)^D

は固有値 1 に対応する部分空間の補空間への射影となる。

したがって固有値 1 の部分空間への射影は

I - (I-A)(I-A)^D

で与えられる。

よって

\lim_{k\to\infty}A^k
=
I-(I-A)(I-A)^D

が成り立つ。


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