4.4.P13
4.4.問題13
すべての実正方行列は実対称行列に相似か?
複素対称行列に相似か?
実相似行列を介してなぜか説明せよ。
ヒント
実対称行列の固有値はすべて実数である。
また、実行列の実相似では固有値は変化しない。
したがって、非実固有値をもつ実行列は実対称行列に実相似ではない。
一方、実行列は複素行列とみなせば、定理4.4.24により複素対称行列に相似である。
実相似行列を介して考えるには、まず実行列を実標準形に移し、その実標準形が複素数体上で複素対称行列に相似であることを利用すればよい。
解答例
まず、実対称行列に実相似であるかどうかを考える。実対称行列 \(S\) は実直交行列によって対角化できるので、その固有値はすべて実数である。したがって、ある実行列 \(A\) が実対称行列 \(S\) に実相似であるとすると、\(A\) と \(S\) は同じ固有値をもつから、\(A\) の固有値もすべて実数でなければならない。
しかし、実行列でも非実固有値をもつものは存在する。例えば、
A=
\begin{pmatrix}
0&-1\\
1&0
\end{pmatrix}
を考える。この行列の固有値は \(i\) と \(-i\) である。一方、実対称行列の固有値はすべて実数であるから、この \(A\) は実対称行列に実相似ではない。したがって、すべての実正方行列が実対称行列に実相似であるわけではない。
次に、複素対称行列に相似であるかを考える。実行列 \(A\) は複素行列 \(M_n(\mathbb C)\) の元とみなすことができる。定理4.4.24によれば、任意の複素正方行列はある複素対称行列に相似である。したがって、ある複素対称行列 \(S\) と複素正則行列 \(P\) が存在して、
A=PSP^{-1}
と書ける。よって、すべての実正方行列は、複素行列として考えれば、ある複素対称行列に相似である。
ここで「実相似行列を介して」考える。任意の実行列 \(A\) に対して、実正則行列 \(Q\) を用いて実標準形 \(R\) に移すことができる。すなわち、
R=Q^{-1}AQ
である。この \(R\) は \(A\) と実相似であるから、\(A\) を複素行列として考えた場合にも \(R\) と複素相似である。
例えば、上の行列 \(A\) はそれ自身が実標準形の一例であり、実相似によって実対称行列にすることはできない。しかし、複素数体まで広げれば、
A\sim_{\mathbb C}S,
\qquad
S^{\top}=S
を満たす複素対称行列 \(S\) が存在する。
したがって結論は、すべての実正方行列が実対称行列に実相似であるわけではないが、すべての実正方行列は複素数体上では複素対称行列に相似である、ということである。実相似では体を実数体から広げることはできないため、非実固有値をもつ実行列を実対称行列に移すことはできない。
一方、複素相似まで許せば、定理4.4.24を適用できるのである。

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