[行列解析3.2.P19]固有値のジョルダンブロック構造の同値条件

3.標準形と三角因子分解

3.2.P19

3.2問題19

\(A\in M_n\)、\(\lambda\) を \(A\) の固有値とする。

(a) 次の2条件が同値であることを示せ:

  • (i) \(\lambda\) に対応する \(A\) のすべてのジョルダンブロックのサイズが 2 以上である;
  • (ii) \(\lambda\) に対応する任意の固有ベクトルは \(A-\lambda I\) の像に含まれる。

(b) 次の5条件が互いに同値であることを示せ:

  • (i) あるジョルダンブロックが \(1\times1\) である;
  • (ii) \(Ax=\lambda x\) を満たす非零ベクトル \(x\) が存在し、かつ \(x\) は \(A-\lambda I\) の像に属さない;
  • (iii) \(Ax=\lambda x\) を満たす非零ベクトル \(x\) が存在し、かつ \(x\) は \(A^*-\overline{\lambda}I\) の零空間に直交していない;
  • (iv) 非零ベクトル \(x,y\) が存在して \(Ax=\lambda x,\; y^*A=\lambda y^*\) かつ \(x^*y\neq 0\);
  • (v) \(A\) はある \(B\in M_{n-1}\) に相似であり、\(A\sim [\lambda]\oplus B\) である。

ヒント

ジョルダン標準形では、固有値 \(\lambda\) に対応するジョルダンブロックのサイズは固有ベクトルや一般固有ベクトルの構造と密接に関係する。特に、サイズが 2 以上のブロックがある場合には、固有ベクトルは \((A-\lambda I)\) の像に現れる。

また線形代数の基本事実として、任意の行列 \(M\) について \(\mathrm{Im}\,M\) は \(\ker M^*\) の直交補空間になる。すなわち \((\mathrm{Im}\,M)^\perp=\ker M^*\) が成り立つ。この関係を \(M=A-\lambda I\) に適用すると条件 (ii) と (iii) の関係が理解できる。

さらにジョルダンブロックが \(1\times1\) であることは、その固有値に対応する固有ベクトルが一般固有ベクトル鎖の先頭として独立に存在することを意味する。この事実を利用すると、条件 (iv)、(v) との同値性も導ける。

解答例

(a) を示す。まず \(A\) をジョルダン標準形に相似変換する。すると \(\lambda\) に対応する部分は \(J_{n_1}(\lambda)\oplus\cdots\oplus J_{n_k}(\lambda)\) の形になる。

(i) が成り立つと仮定する。すなわちすべてのブロックのサイズが \(2\) 以上である。このとき各ブロック \(J_m(\lambda)\,(m\ge2)\) に対して

(A-\lambda I)e_2=e_1

が成り立つ。ここで \(e_1\) は固有ベクトルである。したがってすべての固有ベクトルは \((A-\lambda I)\) の像に含まれる。よって (ii) が成り立つ。

逆に (ii) が成り立つとする。もし \(1\times1\) のジョルダンブロックが存在すると、そのブロックに対応する固有ベクトル \(x\) は

(A-\lambda I)x=0

を満たすが、\((A-\lambda I)\) の像には含まれない。これは (ii) に矛盾する。したがってすべてのジョルダンブロックのサイズは \(2\) 以上である。よって (i) と (ii) は同値である。

(b) を示す。

(i) と (ii) の同値性は (a) の結果から従う。すなわち \(1\times1\) ブロックが存在することは、ある固有ベクトルが \((A-\lambda I)\) の像に属さないことと同値である。

次に (ii) と (iii) の同値性を示す。一般に

(\mathrm{Im}\,M)^\perp=\ker M^*

が成り立つ。ここで \(M=A-\lambda I\) とすると

(\mathrm{Im}(A-\lambda I))^\perp=\ker(A^*-\overline{\lambda}I)

となる。したがって \(x\) が \((A-\lambda I)\) の像に属さないことは、\(\ker(A^*-\overline{\lambda}I)\) に属するベクトルと直交しないことと同値である。よって (ii) と (iii) は同値である。

(iii) と (iv) の同値性を示す。\(y\) を

(A^*-\overline{\lambda}I)y=0

を満たす非零ベクトルとする。このとき \(y^*A=\lambda y^*\) が成り立つ。さらに (iii) の条件は \(x^*y\neq0\) と書けるので (iv) が得られる。

最後に (iv) と (v) の同値性を示す。条件 (iv) が成り立つとき、\(x\) は固有ベクトルであり、さらに \(x^*y\neq0\) であるから \(x\) を基底の一つとして基底を取ることができる。この基底に関する行列表現では

A \sim [\lambda]\oplus B

の形になる。ここで \(B\in M_{n-1}\) である。逆に (v) が成り立てば、最初の成分ベクトルは固有ベクトルとなり (iv) が成立する。

以上より (i)–(v) はすべて互いに同値である。


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