[行列解析3.2.P18]ジョルダン分解 \(A=A_D+A_N\) の一意性

3.標準形と三角因子分解

3.2.P18

3.2問題18

\(A\in M_n\) とする。3.2.7 で述べたジョルダン分解 \(A=A_D+A_N\)(\(A_D\) は対角化可能成分、\(A_N\) は冪零成分、かつ互いに可換)は一意であることを示せ。

すなわち、もし

  • (a) \(A=B+C\)、
  • (b) \(B\) と \(C\) が可換、
  • (c) \(B\) は対角化可能、
  • (d) \(C\) は冪零

を満たすならば \(B=A_D\) かつ \(C=A_N\) であることを示せ。

ヒント

\(A_D=p(A),\;A_N=q(A)\) となる多項式 \(p,q\) が存在することを利用せよ。

次の点の詳細を示せ:
(a) \(B,C\) は \(A\) と可換する;
(b) \(B,C\) は \(A_D,A_N\) と可換する;
(c) \(B\) と \(A_D\) は同時対角化可能で、ゆえに \(A_D-B\) は対角化可能;
(d) \(C\) と \(A_N\) は同時上三角化可能で、ゆえに \(C-A_N\) は冪零;
(e) \(A_D-B=C-A_N\) は同時に対角化可能かつ冪零なので零行列である。


ジョルダン分解では \(A=A_D+A_N\) と書け、\(A_D\) は対角化可能、\(A_N\) は冪零であり、さらに \(A_DA_N=A_NA_D\) が成り立つ。既知の結果として、ある多項式 \(p,q\) が存在して \(A_D=p(A)\)、\(A_N=q(A)\) と表せる。

仮に別の分解 \(A=B+C\) があり、\(B\) が対角化可能、\(C\) が冪零で、さらに \(BC=CB\) が成り立つとする。このとき \(B,C\) は \(A\) と可換することを示し、それを用いて \(A_D,A_N\) とも可換することを導く。

その後、\(B\) と \(A_D\) は同時対角化可能であること、\(C\) と \(A_N\) は同時上三角化可能であることを利用する。すると \(A_D-B\) は対角化可能であり、同時に \(C-A_N\) は冪零である。両者は等しいため、対角化可能かつ冪零な行列は零行列しかないことから結論が従う。

解答例

ジョルダン分解により \(A=A_D+A_N\) と書ける。ただし \(A_D\) は対角化可能、\(A_N\) は冪零であり、さらに \(A_DA_N=A_NA_D\) が成り立つ。また既知の結果として多項式 \(p,q\) が存在して \(A_D=p(A),\;A_N=q(A)\) と表せる。

いま別の分解 \(A=B+C\) が存在し、次を満たすとする。

(a) \(BC=CB\)、 (b) \(B\) は対角化可能、 (c) \(C\) は冪零。

まず (a) を示す。 \(A=B+C\) と \(BC=CB\) より

AB = (B+C)B = B^2+CB
BA = B(B+C) = B^2+BC

であり \(BC=CB\) から

AB=BA

が従う。同様に \(AC=CA\) も成り立つ。したがって \(B,C\) は \(A\) と可換する。

次に (b) を示す。 \(A_D=p(A)\)、\(A_N=q(A)\) は \(A\) の多項式であるため、\(A\) と可換な行列はそれらとも可換する。よって

BA_D=A_DB,\quad CA_D=A_DC
BA_N=A_NB,\quad CA_N=A_NC

が成り立つ。

次に (c) を示す。 \(B\) と \(A_D\) はともに対角化可能であり、さらに互いに可換するので同時対角化可能である。したがって差

A_D-B

も対角化可能である。

次に (d) を示す。 \(C\) と \(A_N\) はともに冪零であり互いに可換するため、同時上三角化可能である。したがって差

C-A_N

は上三角行列で対角成分がすべて 0 となるので冪零である。

最後に (e) を示す。 \(A=B+C\) と \(A=A_D+A_N\) を比較すると

A_D-B=C-A_N

が成り立つ。

左辺は対角化可能であり、右辺は冪零である。したがってこの行列は同時に対角化可能かつ冪零である。

対角化可能な冪零行列は固有値がすべて 0 であり、対角化すると零対角行列になるので零行列である。よって

A_D-B=0
C-A_N=0

が従う。

したがって \(B=A_D\)、\(C=A_N\) であり、ジョルダン分解 \(A=A_D+A_N\) は一意である。


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