[行列解析4.4.P16]共役正規行列のユニタリ合同標準形

4.エルミート行列、対称行列、合同行列

4.4.P16

4.4.問題16

(4.4.17) の 2×2 実直交ブロックは、非実非負でない \(A\overline{A}\) の固有値ペア \(\tau_{2j} e^{\pm 2i \theta_j}\), \(\theta_j \in (0, \pi/2]\) から得られる角度により決定される(\(a_j = \cos \theta_j, b_j = \sin \theta_j\))。

前問を用いて、各ブロックが次のユニタリブロック(したがって合同正規)にユニタリ合同であることを示せ:

\begin{bmatrix} 0 & 1 \\ e^{2i\theta_j} & 0 \end{bmatrix}

この観察が、合同正規行列の標準形(4.4.17)の代替としてどのように導かれるかを説明せよ。

すなわち、\(A \in M_n\) が共役正規であることと、各ブロックが

(4.4.28)
\begin{bmatrix}\sigma\end{bmatrix}
\quad \text{または} \quad
\tau \begin{bmatrix}0 & 1 \\ e^{i\theta} & 0\end{bmatrix}\\
\sigma, \tau, \theta \in \mathbb{R}, \sigma \ge 0, \tau \gt 0, 0 \lt \theta \le \pi

であるブロックの直和にユニタリ合同であることは同値である。

各ブロックのパラメータが \(A\overline{A}\) の固有値によって一意に決定される理由を説明せよ。

ヒント

前問で得られた実直交 \(2\times2\) ブロックを、その角度に対応するユニタリ行列によってユニタリ合同変換する。

\(A\overline{A}\) の固有値が \(\tau^2e^{\pm i\phi}\) であれば、対応する \(2\times2\) ブロックは \(\tau\begin{pmatrix}0&1\\ e^{i\phi}&0\end{pmatrix}\) と表せる。

問題の記号では \(\phi=2\theta_j\) である。さらに、このブロックの \(A\overline{A}\) を直接計算すると、その固有値から \(\tau\) と \(\phi\) が一意に決まることが分かる。

解答例

(4.4.17) に現れる実直交 \(2\times2\) ブロックを考える。問題文の記号に従い、そのブロックに対応する \(A\overline{A}\) の固有値を \(\tau_{2j}e^{\pm2i\theta_j}\)、\(\theta_j\in(0,\pi/2]\) とする。

ここで \(a_j=\cos\theta_j\)、\(b_j=\sin\theta_j\) とおく。前問の結果より、この実直交ブロックはユニタリ合同によって次のブロックに変換できる。

この行列はユニタリ行列である。実際、その随伴行列との積を計算すると

\begin{bmatrix}
0 & 1\\
e^{2i\theta_j} & 0
\end{bmatrix}
\begin{bmatrix}
0 & e^{-2i\theta_j}\\
1 & 0
\end{bmatrix}
=
\begin{bmatrix}
1 & 0\\
0 & 1
\end{bmatrix}

したがって、この \(2\times2\) ブロックはユニタリ行列であり、特に合同正規行列である。

次に、正の実数 \(\tau\) を掛けたブロック

を考える。このとき、その複素共役は

\overline{C(\tau,\phi)}
=
\tau
\begin{bmatrix}
0 & 1\\
e^{-i\phi} & 0
\end{bmatrix}

であるから、\(C(\tau,\phi)\overline{C(\tau,\phi)}\) は

C(\tau,\phi)\overline{C(\tau,\phi)}
=
\tau^2
\begin{bmatrix}
0 & 1\\
e^{i\phi} & 0
\end{bmatrix}
\begin{bmatrix}
0 & 1\\
e^{-i\phi} & 0
\end{bmatrix}
=
\tau^2
\begin{bmatrix}
e^{-i\phi} & 0\\
0 & e^{i\phi}
\end{bmatrix}

となる。したがって、\(C(\tau,\phi)\overline{C(\tau,\phi)}\) の固有値は

\tau^2e^{\pm i\phi}

である。ここで \(\phi=2\theta_j\) とおけば、問題文で与えられた \(A\overline{A}\) の固有値 \(\tau_{2j}e^{\pm2i\theta_j}\) に対応する。ただし、\(\tau_{2j}\) はこの \(2\times2\) ブロックのスカラー因子の二乗に対応するため、ブロックの係数を \(\tau\) と書けば \(\tau^2=\tau_{2j}\) である。

以上から、(4.4.17) の各実直交 \(2\times2\) ブロックは、ユニタリ合同によって

\tau
\begin{bmatrix}
0 & 1\\
e^{2i\theta_j} & 0
\end{bmatrix},
\qquad \tau \gt 0,\quad
0 \lt 2\theta_j\leq\pi

という形に置き換えることができる。これにより、実直交ブロックを用いた (4.4.17) の代わりに、ユニタリな \(2\times2\) ブロックを用いて標準形を記述できる。

一方、\(1\times1\) ブロックについては、ユニタリ合同変換によって非負実数 \(\sigma\) の形にできる。このブロックでは

\sigma\overline{\sigma}=\sigma^2

である。したがって、共役正規行列 \(A\) は、ユニタリ合同によって

(4.4.28)
\begin{bmatrix}
\sigma
\end{bmatrix}
\qquad\text{または}\qquad
\tau
\begin{bmatrix}
0 & 1\\
e^{i\theta} & 0
\end{bmatrix},
\qquad
\sigma\geq0,\quad
\tau>0,\quad
0 \lt \theta\leq\pi

というブロックの直和にユニタリ合同である。これが (4.4.28) の標準形である。

逆に、(4.4.28) の各ブロックは共役正規である。\(1\times1\) ブロック \(\sigma\) は明らかであり、\(2\times2\) ブロックについては

C=
\tau
\begin{bmatrix}
0 & 1\\
e^{i\theta} & 0
\end{bmatrix}

とおくと、\(C\) はユニタリ行列に正の実数 \(\tau\) を掛けたものである。したがって \(C\) は合同正規であり、ブロックの直和も合同正規である。ユニタリ合同変換は共役正規性を保つので、(4.4.28) の形にユニタリ合同な行列も共役正規である。

また、\(2\times2\) ブロック

\tau
\begin{bmatrix}
0 & 1\\
e^{i\theta} & 0
\end{bmatrix}

に対応する \(A\overline{A}\) の固有値は

\lambda_1=\tau^2e^{-i\theta},
\qquad
\lambda_2=\tau^2e^{i\theta}

である。したがって、その絶対値から

\tau=\sqrt{|\lambda_1|}
=\sqrt{|\lambda_2|}

が一意に決まる。また、\(\lambda_2/\tau^2=e^{i\theta}\) であり、\(0 \lt\theta\leq\pi\) と範囲を指定しているので、\(\theta\) も一意に決まる。

特に問題文の \(\tau_{2j}e^{\pm2i\theta_j}\) という固有値については、\(\tau=\sqrt{\tau_{2j}}\)、\(\theta=2\theta_j\) と対応させればよい。このように、\(A\overline{A}\) の固有値から各ブロックの大きさと角度が決定されるため、(4.4.28) は (4.4.17) に代わる共役正規行列の標準形となる。

[行列解析4.4]ユニタリ合同と複素対称行列
この節の目次4.4.2 補題4.4 ユニタリ合同と複素対称行列複素エルミート行列と複素対称行列は、ともに複素平面における単位円板の解析写像の研究に現れる。もし \( f \) が単位円板上の複素解析関数で、正規化条件 \( f(0) = 0...


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