[行列解析4.3.P25]上二重対角行列の特異値の性質

4.エルミート行列、対称行列、合同行列

4.3.P25

4.3.問題25

\(A \in M_n\) を上二重対角行列 (0.9.10) とする。
(a) その特異値は、成分の絶対値のみに依存することを示せ。
(b) 各 \(i = 1, \ldots, n\) について \(a_{ii} \neq 0\)、各 \(i = 1, \ldots, n-1\) について \(a_{i,i+1} \neq 0\) と仮定する。このとき、\(A\) が \(n\) 個の異なる特異値をもつことを示せ。

ヒント

特異値は \( A^{*}A \) の固有値の平方根である。

(a) では対角ユニタリ行列を左右から掛けて各非零成分の偏角を消去することを考える。

(b) では \( A^{*}A \) が既約三重対角エルミート行列となることを用いる。

解答例

(a)

\( A \) は上二重対角行列であるから、対角ユニタリ行列

D=\operatorname{diag}(d_1,\ldots,d_n)

を適切に選べば、\( D^{*}AD \) の対角成分および上副対角成分はすべて非負実数にできる。

一方、\( D \) はユニタリであるから、

(D^{*}AD)^{*}(D^{*}AD)=D^{*}A^{*}AD

となり、\( A^{*}A \) と \( (D^{*}AD)^{*}(D^{*}AD) \) はユニタリ相似である。したがって両者は同じ固有値をもち、特異値も一致する。

ゆえに、\( A \) の特異値は各成分の偏角には依存せず、成分の絶対値のみに依存する。

(b)

(a) より、成分をすべて正の実数としてよい。

このとき \( A^{*}A \) はエルミート三重対角行列であり、その非対角成分は

\overline{a_{ii}}\,a_{i,i+1}=a_{ii}a_{i,i+1}>0

であるから、上下の副対角成分はすべて非零となる。

したがって、\( A^{*}A \) は既約三重対角エルミート行列である。

既約三重対角エルミート行列の固有値はすべて単純であるから、\( A^{*}A \) は \( n \) 個の異なる固有値をもつ。

特異値はこれらの固有値の正平方根であるため、平方根をとっても重複は生じない。

したがって、\( A \) は \( n \) 個の異なる特異値をもつ。

[行列解析4.3]エルミート行列に関する固有値の不等式
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