3.3.P34
3.3 問題34
\( A, B \in M_n \) とし、\( C = AB - BA \) とする。\( A \) の最小多項式 (3.3.5b) を考え、\( m = 2 \max\{r_1, \ldots, r_d\} - 1 \) とする。
q_A(t) = \prod_{i=1}^d (t - \lambda_i)^{r_i}, \quad 1 \leq r_i \leq s_i
もし \( A \) が \( C \) と可換であるなら、\( C^m = 0 \) が成り立つ。
この事実から 下記の(2.4.P12 (a,c)) の主張を導きなさい。
2.4.P12(a,c)
(a) 交換子\( C \) が \( A \) と交換するとき、すべての \( k = 2, \ldots, n \) に対して
\mathrm{tr} C^k = \mathrm{tr}(C^{k-1}(AB - BA)) \\ = \mathrm{tr}(A C^{k-1} B - C^{k-1} B A) = 0が成り立つ。
Jacobson の補題交換子\( AB-BA \) は 、\( A \) または \( B \) と交換するならば零行列的(nilpotent)である。
(c) \( A \) が対角化可能ならば、\( C \) が \( A \) と交換することと \( C=0 \) が同値である。
ヒント
仮定より \(C=AB-BA\) が \(A\) と可換であるとき、\(C\) は冪零行列になる(Jacobson の補題)。このときトレースの巡回性 \(\mathrm{tr}(XY)=\mathrm{tr}(YX)\) を用いると (a) が従う。また、\(A\) が対角化可能ならば、その最小多項式は重複を持たないので、冪零行列と可換であることから \(C=0\) を導くことができる。
解答例
まず、仮定より \(C=AB-BA\) が \(A\) と可換であるとする。このとき与えられた結果より、ある整数 \(m=2\max\{r_1,\ldots,r_d\}-1\) に対して
C^m = 0
が成り立つ。したがって \(C\) は冪零行列である。
(a) 任意の \(k \geq 2\) に対して、トレースの巡回性を用いると
\mathrm{tr} C^k = \mathrm{tr}(C^{k-1}(AB-BA))
= \mathrm{tr}(A C^{k-1} B - C^{k-1} B A)
となる。さらに巡回性より
\mathrm{tr}(A C^{k-1} B) = \mathrm{tr}(C^{k-1} B A)
が成り立つので、
\mathrm{tr} C^k = 0
を得る。
上で示したように、\(C\) が \(A\) と可換であれば \(C\) は冪零である。
対称的に、\(C\) が \(B\) と可換な場合も同様に議論できる。これが Jacobson の補題である。
(c) \(A\) が対角化可能であるとする。このとき最小多項式は
q_A(t)=\prod_{i=1}^d (t-\lambda_i)
の形で重複を持たない。いま \(C\) が \(A\) と可換であるとすると、同時対角化が可能である。したがって、ある基底で
A = \mathrm{diag}(\lambda_1,\ldots,\lambda_n)
と表せる。このとき \(C\) も対角行列となるが、さらに \(C\) は冪零であるから、その対角成分はすべて 0 である。よって
C = 0
が従う。逆に \(C=0\) ならば自明に \(A\) と可換である。
以上より、(a),(c) が示された。

行列解析の総本山
総本山の目次📚

記号の意味🔎


コメント