[行列解析3.2.P27]冪零行列と随伴行列のジョルダン構造

3.標準形と三角因子分解

3.2.P27

3.2問題27

(a) 各 \( k = 1, 2, \ldots \) について、\(\mathrm{adj}\,J_k(0)\) が \( J_2(0) \oplus 0_{k-2} \) に相似であることを示せ。

(b) \( A \in M_n \) が冪零であり、\(\mathrm{rank}\,A = n-1\) ならば、\( A \) が \( J_n(0) \) に相似であることを説明せよ。

(c) \( A \in M_n \) が冪零ならば、\((\mathrm{adj}\,A)^2 = 0\) であることを示せ。

ヒント

ジョルダンブロック \(J_k(0)\) は上三角で対角成分がすべて 0 の行列であり、冪零行列の基本例である。随伴行列 \(\mathrm{adj}\,A\) は余因子行列の転置であり、特に \(\det A=0\) の場合には階数が高くても 1 以下になることが多い。まず小さいサイズで \(\mathrm{adj}\,J_k(0)\) の形を調べると、非零成分は 1 つのブロックだけになることが分かる。また冪零行列の階数条件 \(\mathrm{rank}\,A=n-1\) はジョルダンブロックが 1 個であることを意味する。最後に随伴行列の階数の性質を利用すると \((\mathrm{adj}\,A)^2=0\) が従う。

解答例

(a) 冪零ジョルダンブロックを \(J_k(0)\) とする。

J_k(0)=
\begin{pmatrix}
0&1&0&\cdots&0\\
0&0&1&\cdots&0\\
\vdots& &\ddots&\ddots&\vdots\\
0&\cdots&0&0&1\\
0&\cdots&\cdots&0&0
\end{pmatrix}

この行列は \(\det J_k(0)=0\) である。余因子行列を計算すると、非零となる余因子は主対角線の両端に対応する部分のみであり、結果として階数 1 の冪零行列になる。

ジョルダン標準形を調べると、この行列は 2 次の冪零ブロックを 1 個だけもち、残りは零ブロックとなる。したがって

\mathrm{adj}\,J_k(0) \sim J_2(0)\oplus 0_{k-2}

が成り立つ。

(b) \(A\in M_n\) が冪零であり \(\mathrm{rank}\,A=n-1\) とする。階数・零化度定理より

\dim\ker A = 1

である。冪零行列のジョルダン標準形は固有値 0 のジョルダンブロックの直和である。核の次元はジョルダンブロックの個数に等しいため、ここではブロックは 1 個しか存在しない。

したがってジョルダン標準形は

J_n(0)

である。よって \(A\) は \(J_n(0)\) に相似である。

(c) \(A\) を冪零行列とする。冪零行列は特異行列であり

\det A = 0

である。随伴行列の基本恒等式

A\,\mathrm{adj}\,A = (\det A)I

より

A\,\mathrm{adj}\,A = 0

が得られる。したがって \(\mathrm{adj}\,A\) の像は \(\ker A\) に含まれる。冪零行列では \(\ker A\) は 1 次元以上であり、\(\mathrm{adj}\,A\) の階数は高々 1 である。

階数 1 以下の冪零行列を 2 回掛けると零行列になるため

(\mathrm{adj}\,A)^2 = 0

が従う。


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