[行列解析3.2.P23]Drazin逆行列の極限表示公式

3.標準形と三角因子分解

3.2.P23

3.2問題23

\(A\in M_n\)、零の固有値の指数を \(q\) とし、与えられた整数 \(k\ge q\) とする。次を示せ:

A^D = \lim_{t\to 0} (A^{k+1} + tI)^{-1} A^k

(ここで極限は \(t\) を正の実数で 0 に近づける極限で良い。)

ヒント

零固有値の指数を \(q\) とすると、\(A\) はジョルダン標準形により \(A\sim J=J_0\oplus J_1\) と分解できる。ここで \(J_0\) は固有値 \(0\) に対応する冪零ブロック、\(J_1\) は非零固有値に対応する可逆部分である。\(k\ge q\) のとき \(J_0^k=0\) が成り立つ。したがって式をジョルダン標準形に移して極限を計算すれば、非零固有値部分では逆行列が現れ、零固有値部分では極限が 0 になることを確かめればよい。

解答例

\(A\in M_n\) とし、固有値 \(0\) の指数を \(q\) とする。すると適当な可逆行列 \(S\) が存在して \(A=SJS^{-1}\) となるジョルダン標準形 \(J\) をとることができる。

このとき \(J\) は

J = J_0 \oplus J_1

と書ける。ここで \(J_0\) は固有値 \(0\) に対応するジョルダンブロックの直和であり冪零行列、\(J_1\) は非零固有値に対応する可逆行列である。

仮定より \(k\ge q\) であるから、冪零指数の性質より

J_0^k = 0

が成り立つ。

次に与えられた式を \(J\) について計算する。相似変換を用いると

(A^{k+1}+tI)^{-1}A^k
=
S (J^{k+1}+tI)^{-1}J^k S^{-1}

となる。したがって極限は \(J\) の場合を調べれば十分である。

まず \(J_0\) 部分については

(J_0^{k+1}+tI)^{-1}J_0^k
=
(tI)^{-1}\cdot 0
=
0

となり、極限も 0 である。

次に \(J_1\) は可逆であるから

(J_1^{k+1}+tI)^{-1}J_1^k
=
J_1^{-1}(I+tJ_1^{-(k+1)})^{-1}

と書ける。ここで \(t\to0\) とすると

\lim_{t\to0}(J_1^{k+1}+tI)^{-1}J_1^k
=
J_1^{-1}

が得られる。

以上より極限は

\lim_{t\to0}(J^{k+1}+tI)^{-1}J^k
=
0 \oplus J_1^{-1}

となる。これはジョルダン標準形における Drazin 逆行列

J^D = 0 \oplus J_1^{-1}

に一致する。

最後に相似変換を戻すと

A^D
=
S J^D S^{-1}
=
\lim_{t\to0}(A^{k+1}+tI)^{-1}A^k

が得られる。したがって求める式が成り立つ。


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