[行列解析4.4.P8]還元アルゴリズムによる行列の対角化

4.エルミート行列、対称行列、合同行列

4.4.P8

4.4.問題8

定理4.4.3の証明 の還元アルゴリズムを
\(A = \begin{pmatrix} 1 & i \\ i & 1 \end{pmatrix}\) に適用せよ。

結果、\(\mathrm{diag}(\sqrt{2}, \sqrt{2})\) にユニタリ合同であることを示せ。

ヒント

まず \(A\bar{A}\) を計算して、その固有値を求める。得られた固有値がすべて正の実数であれば、定理4.4.3の還元アルゴリズムにより、\(A\) は対角成分が固有値の平方根である対角行列にユニタリ合同できる。ここでは \(A\) が対称行列なので、適切な位相を付けた直交基底を選べばよい。

解答例

与えられた行列は

A=
\begin{pmatrix}
1&i\\
i&1
\end{pmatrix}

である。その複素共役行列は

\bar{A}
=
\begin{pmatrix}
1&-i\\
-i&1
\end{pmatrix}

である。したがって、

A\bar{A}
=
\begin{pmatrix}
1&i\\
i&1
\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}
1&-i\\
-i&1
\end{pmatrix}
=
\begin{pmatrix}
2&0\\
0&2
\end{pmatrix}
=
2I.

したがって、\(A\bar{A}\) の固有値は \(2,2\) である。よって定理4.4.3における \(p\) は \(2\) であり、還元後の対角成分はそれぞれ \(\sqrt{2}\) となる。

次に、\(A\) の固有ベクトルとして

v_1=\frac{1}{\sqrt{2}}
\begin{pmatrix}
1\\
1
\end{pmatrix},
\qquad
v_2=\frac{1}{\sqrt{2}}
\begin{pmatrix}
1\\
-1
\end{pmatrix}

を取る。実際、

Av_1=(1+i)v_1,
\qquad
Av_2=(1-i)v_2

である。ここで \(1+i=\sqrt{2}e^{i\pi/4}\)、\(1-i=\sqrt{2}e^{-i\pi/4}\) である。したがって、それぞれの固有値の位相を半分だけ \(v_1,v_2\) に付けることで、対角成分を \(\sqrt{2}\) にすることができる。

そこで、

U=
\frac{1}{\sqrt{2}}
\begin{pmatrix}
e^{i\pi/8}&e^{-i\pi/8}\\
e^{i\pi/8}&-e^{-i\pi/8}
\end{pmatrix}

とおく。この \(U\) の列ベクトルは互いに直交し、それぞれのノルムは \(1\) である。したがって \(U\) はユニタリ行列である。

実際、\(U\) は実直交行列に対して各列に絶対値1の複素数を掛けた形になっているので、

U^*U=I

が成り立つ。

ここで \(U^T U\) ではなく \(UU^T\) を計算する。まず、

UU^T
=
\frac{1}{2}
\begin{pmatrix}
e^{i\pi/8}&e^{-i\pi/8}\\
e^{i\pi/8}&-e^{-i\pi/8}
\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}
e^{i\pi/8}&e^{i\pi/8}\\
e^{-i\pi/8}&-e^{-i\pi/8}
\end{pmatrix}.

各成分を計算すると、

UU^T
=
\frac{1}{2}
\begin{pmatrix}
e^{i\pi/4}+e^{-i\pi/4}&e^{i\pi/4}-e^{-i\pi/4}\\
e^{i\pi/4}-e^{-i\pi/4}&e^{i\pi/4}+e^{-i\pi/4}
\end{pmatrix}.

オイラーの公式より \(e^{i\pi/4}+e^{-i\pi/4}=\sqrt{2}\)、\(e^{i\pi/4}-e^{-i\pi/4}=i\sqrt{2}\) であるから、

UU^T
=
\frac{1}{\sqrt{2}}
\begin{pmatrix}
1&i\\
i&1
\end{pmatrix}
=
\frac{1}{\sqrt{2}}A.

したがって、

A=\sqrt{2}UU^T
=
U
\begin{pmatrix}
\sqrt{2}&0\\
0&\sqrt{2}
\end{pmatrix}
U^T.

以上より、与えられた行列 \(A\) は、ユニタリ行列 \(U\) による合同変換によって

\operatorname{diag}(\sqrt{2},\sqrt{2})
=
\begin{pmatrix}
\sqrt{2}&0\\
0&\sqrt{2}
\end{pmatrix}

に変換される。すなわち、還元アルゴリズムの結果として \(A\) は \(\operatorname{diag}(\sqrt{2},\sqrt{2})\) にユニタリ合同である。

[行列解析4.4]ユニタリ合同と複素対称行列
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