[行列解析4.3.P27]1行1列を付加した行列の階数の増加量

4.エルミート行列、対称行列、合同行列

4.3.P27

4.3.問題27

\(A \in M_n, \; y, z \in \mathbb{C}^n, \; a \in \mathbb{C}\) を与える。\(1 \leq \mathrm{rank} A = r \lt n\) とし、

\hat{A} = \begin{bmatrix} A & y \\ z^{\top} & a \end{bmatrix}, \quad \delta = \mathrm{rank} \hat{A} - \mathrm{rank} A

(a) 次を説明せよ。

\mathrm{rank}\begin{bmatrix} 0_n & y \\ z^{\top} & a \end{bmatrix} \leq 2

従って \(1 \leq \delta \leq 2\) となる。
(b) 次の証明のスケッチの詳細を与えよ。すなわち、\(\delta = 2\) であるのは、\(y\) が \(A\) の列空間に含まれず、かつ \(z^{\top}\) が \(A\) の行空間に含まれない場合に限る。(0.4.6(f)) を用いて

A = S \begin{bmatrix} I_r & 0 \\ 0 & 0_{n-r} \end{bmatrix} R

と書く。ただし \(S, R \in M_n\) は非特異である。さらに

S^{-1} y = \begin{bmatrix} y_1 \\ y_2 \end{bmatrix}, \quad R^{-\top} z = \begin{bmatrix} z_1 \\ z_2 \end{bmatrix}, \quad y_1, z_1 \in \mathbb{C}^r

と分割する。このとき、\(y\) が \(A\) の列空間に含まれるのは \(y_2 = 0\) の場合に限られ、また \(z\) が \(A^T\) の列空間に含まれるのは \(z_2 = 0\) の場合に限られる。

さらに、

\mathrm{rank}\,\hat{A} = \mathrm{rank} \begin{bmatrix} I_r & 0 & y_1 \\ 0 & 0_{n-r} & y_2 \\ z_1^{\top} & z_2^{\top} & a \end{bmatrix} = r + 2

が成り立つのは、\(y_2 \neq 0 \neq z_2\) の場合に限る。
(c) \(A\) がエルミートで \(z = \bar{y}\) のとき、\(\delta = 2\) であるのは \(y\) が \(A\) の列空間に含まれない場合に限ることを説明せよ。(4.3.P21(a)) と比較せよ。

ヒント

(a) では階数の劣加法性を用いる。(b) では標準形に変換して付加された列と行が新たな独立性を与えるかを調べる。(c) ではエルミート行列では列空間と行空間が共役によって対応することを利用する。

解答例

(a)

次のように分解できる。

\hat A=\begin{bmatrix}A&0\\0&0\end{bmatrix}+\begin{bmatrix}0_n&y\\z^{\top}&a\end{bmatrix}

第2項は非零となり得る列が最後の1列のみ、非零となり得る行が最後の1行のみであるから、その階数は高々2である。

\operatorname{rank}\begin{bmatrix}0_n&y\\z^{\top}&a\end{bmatrix}\le2

階数の劣加法性より

\operatorname{rank}\hat A\le\operatorname{rank}A+2

である。一方、部分行列 \(A\) を含むので

\operatorname{rank}\hat A\ge\operatorname{rank}A

したがって

0\le\delta\le2

が成り立つ。

(b)

階数標準形より

A=S\begin{bmatrix}I_r&0\\0&0_{n-r}\end{bmatrix}R

と書ける。

さらに

S^{-1}y=\begin{bmatrix}y_1\\y_2\end{bmatrix},\qquad
R^{-\top}z=\begin{bmatrix}z_1\\z_2\end{bmatrix}

と分割すると、\(\hat A\) は非特異変換によって

\begin{bmatrix}
I_r&0&y_1\\
0&0_{n-r}&y_2\\
z_1^{\top}&z_2^{\top}&a
\end{bmatrix}

に変換される。

\(y\) が \(A\) の列空間に属することと \(y_2=0\) は同値であり、\(z^{\top}\) が \(A\) の行空間に属することと \(z_2=0\) も同値である。

\(y_2\neq0\) であれば最後の列は既存の列の一次結合では表せず、\(z_2\neq0\) であれば最後の行は既存の行の一次結合では表せない。

したがって、新たに列方向と行方向でそれぞれ1ずつ階数が増加するのは \(y_2\neq0\) かつ \(z_2\neq0\) の場合に限られる。このとき

\operatorname{rank}\hat A=r+2

となる。ゆえに \(\delta=2\) となるのは、\(y\) が \(A\) の列空間に含まれず、かつ \(z^{\top}\) が \(A\) の行空間に含まれない場合に限る。

(c)

\(A\) がエルミートであれば、行空間は列空間の共役転置と一致する。また \(z=\bar y\) であるから、\(z^{\top}\) が \(A\) の行空間に属することと、\(y\) が \(A\) の列空間に属することは同値である。

したがって、(b) の結果より \(\delta=2\) となるのは、\(y\) が \(A\) の列空間に含まれない場合に限る。

[行列解析4.3]エルミート行列に関する固有値の不等式
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