[行列解析3.2.P25]\(A^2\) 非退化から従う行列 \(A\) の性質

3.標準形と三角因子分解

3.2.P25

3.2問題25

\( A \in M_n \) が与えられ、\( A^2 \) が非退化であると仮定する。このとき以下を説明せよ。

(a) \( A \) も非退化である。

(b) \( \lambda \) が \( A \) の非零固有値ならば、\(-\lambda\) は \( A \) の固有値ではない。

(c) \( A \) が特異ならば、固有値 0 の代数的重複度は 1 である。

(d) \(\mathrm{rank}\,A \geq n-1\)。

(e) 多項式 \( p(t) \) が存在して \( A = p(A^2) \) となる。

ヒント

非退化(nonderogatory)とは、最小多項式と特性多項式が一致する行列のことである。したがって各固有値に対してジョルダンブロックは 1 つしか存在しない。条件 \(A^2\) が非退化であることから、\(A^2\) の固有値構造が強く制限される。固有値の関係 \(A v=\lambda v\) ならば \(A^2 v=\lambda^2 v\) を利用すると、\(A\) の固有値の配置に制約が生じる。また特性多項式やジョルダン標準形の性質を用いることで、核の次元や階数についての主張も導かれる。

解答例

(a) まず \(A^2\) が非退化であると仮定する。非退化行列では、各固有値に対してジョルダンブロックは 1 個しか存在しない。\(A\) の固有値を \(\lambda\) とすると、対応する固有ベクトル \(v\neq0\) に対して

Av=\lambda v

が成り立つ。このとき

A^2 v=\lambda^2 v

となるので、\(A^2\) の固有値は \(\lambda^2\) である。もし \(A\) に同じ固有値に対して複数のジョルダンブロックが存在すると、それらは \(A^2\) においても複数のブロックを与える。これは \(A^2\) が非退化であることに矛盾する。したがって \(A\) も非退化である。

(b) \(\lambda\neq0\) が \(A\) の固有値であるとする。すると \(A^2\) の固有値は \(\lambda^2\) である。もし \(-\lambda\) も \(A\) の固有値であれば、対応する固有ベクトル \(v,w\) に対して

Av=\lambda v,\quad Aw=-\lambda w

となる。すると

A^2 v=\lambda^2 v,\quad A^2 w=\lambda^2 w

となり、固有値 \(\lambda^2\) に対して少なくとも 2 個の独立な固有ベクトルが存在する。これは \(A^2\) が非退化であること(各固有値に対してジョルダンブロックが 1 つ)に矛盾する。したがって \(-\lambda\) は \(A\) の固有値ではない。

(c) \(A\) が特異であるとする。このとき固有値 0 が存在する。もし固有値 0 の代数的重複度が 2 以上であれば、\(A^2\) においても固有値 0 のジョルダンブロックが複数存在することになる。これは \(A^2\) が非退化であることに矛盾する。したがって固有値 0 の代数的重複度は

1

である。

(d) 固有値 0 の代数的重複度が 1 であるので、核の次元は高々 1 である。したがって

\dim \ker A \le 1

である。階数・零化度定理より

\mathrm{rank}\,A = n-\dim\ker A

であるから

\mathrm{rank}\,A \ge n-1

が従う。

(e) (b) より、\(A\) の固有値 \(\lambda\neq0\) に対して \(-\lambda\) は固有値ではない。したがって固有値 \(\lambda\) は値 \(\lambda^2\) によって一意に決定される。つまり、ある関数 \(f\) が存在して

\lambda = f(\lambda^2)

と書ける。この関数を固有値上で定義し、多項式補間を用いれば多項式 \(p(t)\) が存在して

A = p(A^2)

となる。すなわち \(A\) は \(A^2\) の多項式として表すことができる。


行列解析の総本山

総本山の目次📚

[行列解析]総本山📚
行列解析の総本山。行列解析の内容を網羅的かつ体系的に整理しています。線形代数の学習を一通り終えた方が、次のステップとして取り組むのに最適です。行列に関する不等式を研究するには、行列解析の知識が欠かせません。

記号の意味🔎

[行列解析9.0]主要な記号一覧🔎
行列解析で使用している記号や用語の簡単な説明です。

コメント

タイトルとURLをコピーしました