[行列解析4.4.P20]ジョルダン標準形を用いた対称行列の積表示

4.エルミート行列、対称行列、合同行列

4.4.P20

4.4.問題20

ジョルダンブロック \(J_m(\lambda)\)(3.1.2)と反転行列 \(K_m\)(0.9.5.1)を考える。

なぜ \(\hat{J}_m(\lambda) = K_m J_m(\lambda)\) が対称であり、\(\lambda\) が実の場合は実対称となるか説明せよ。

行列 \(A \in M_n\) がジョルダン標準形 (3.1.12) を持つとし、\(\hat{J} = K_{n_1} J_{n_1}(\lambda_1) \oplus \cdots \oplus K_{n_q} J_{n_q}(\lambda_q)\)、\(\hat{K} = K_{n_1} \oplus \cdots \oplus K_{n_q}\) とすると、なぜ \(A = (S \hat{K} S^T)(S^{-T} \hat{J} S^{-1})\) が二つの複素対称行列の積として表せるか説明せよ。

これは (4.4.24) に依存しない (4.4.25) の証明である。

ヒント

ジョルダンブロック \(J_m(\lambda)\) に対して、\(K_m\) は行と列を反転する置換行列である。この行列を左から掛けると、ジョルダンブロックの上三角部分が反転して対称になる。実際、\(K_mJ_m(\lambda)\) とその転置を直接比較すればよい。

次に、\(A\) のジョルダン標準形を \(A=SJS^{-1}\) とする。各ジョルダンブロックについて \(J_m(\lambda)=K_m(K_mJ_m(\lambda))\) が成り立ち、\(K_m^{-1}=K_m\) を用いると \(J=\hat K\hat J\) と書ける。そこで \(A\) を二つの因子に分け、\(S^T S^{-T}=I\) を挿入することで、それぞれを対称行列にすることができる。

解答例

まず、ジョルダンブロック \(J_m(\lambda)\) と逆行列 \(K_m\) を考える。\(K_m\) は反転行列であり、

K_m=
\begin{bmatrix}
0&0&\cdots&0&1\\
0&0&\cdots&1&0\\
\vdots&\vdots&\ddots&\vdots&\vdots\\
0&1&\cdots&0&0\\
1&0&\cdots&0&0
\end{bmatrix}

を満たす。特に \(K_m\) は実対称な直交行列であり、

K_m^{\top}=K_m,
\qquad
K_m^{-1}=K_m

である。

ジョルダンブロックを \(J_m(\lambda)=\lambda I_m+N_m\) と書く。ただし \(N_m\) は上隣接対角線上に \(1\) が並ぶ行列である。このとき、反転行列 \(K_m\) との間には

K_mN_m=N_m^{\top}K_m

という関係がある。したがって、

\begin{aligned}
\hat{J}_m(\lambda)^{\top}
&=(K_mJ_m(\lambda))^{\top}\\
&=J_m(\lambda)^{\top}K_m^{\top}\\
&=(\lambda I_m+N_m^{\top})K_m\\
&=\lambda K_m+N_m^{\top}K_m\\
&=\lambda K_m+K_mN_m\\
&=K_m(\lambda I_m+N_m)\\
&=K_mJ_m(\lambda)\\
&=\hat{J}_m(\lambda).
\end{aligned}

よって \(\hat{J}_m(\lambda)=K_mJ_m(\lambda)\) は対称行列である。さらに \(K_m\) は実行列なので、\(\lambda\) が実数なら \(J_m(\lambda)\) も実行列である。したがってこの場合、\(\hat{J}_m(\lambda)\) は実対称行列となる。

次に、\(A\) がジョルダン標準形を持つとする。すなわち、ある正則行列 \(S\) によって

A=SJS^{-1}

と書ける。ここで

J=
J_{n_1}(\lambda_1)\oplus\cdots\oplus J_{n_q}(\lambda_q)

である。各 \(K_{n_j}\) は \(K_{n_j}^{-1}=K_{n_j}\) を満たすので、各ブロックについて

J_{n_j}(\lambda_j)
=
K_{n_j}\bigl(K_{n_j}J_{n_j}(\lambda_j)\bigr)

が成り立つ。したがって、定義した \(\hat K\) と \(\hat J\) を用いると、

J=\hat K\hat J

となる。よって、

A=S\hat K\hat J S^{-1}

である。ここで \(I=S^{\top}S^{-\top}\) を挿入すると、

\begin{aligned}
A
&=S\hat K\hat J S^{-1}\\
&=S\hat K S^{\top}S^{-\top}\hat J S^{-1}\\
&=(S\hat K S^{\top})(S^{-\top}\hat J S^{-1}).
\end{aligned}

ここで \(\hat K\) は各 \(K_{n_j}\) の直和であるから、実対称行列である。実際、

\hat K^{\top}
=
K_{n_1}^{\top}\oplus\cdots\oplus K_{n_q}^{\top}
=
\hat K

また、先ほど示したように各 \(K_{n_j}J_{n_j}(\lambda_j)\) は対称なので、その直和である \(\hat J\) も対称である。したがって、

\hat J^{\top}=\hat J

が成り立つ。

そこで、第1因子を転置すると、

(S\hat K S^{\top})^{\top}
=
S\hat K^{\top}S^{\top}
=
S\hat K S^{\top}

となるので、\(S\hat K S^{\top}\) は対称行列である。同様に、第2因子については、

\begin{aligned}
(S^{-\top}\hat J S^{-1})^{\top}
&=S^{-\top}\hat J^{\top}S^{-1}\\
&=S^{-\top}\hat J S^{-1}.
\end{aligned}

となるので、\(S^{-\top}\hat J S^{-1}\) も対称行列である。

したがって、

A=(S\hat K S^{\top})(S^{-\top}\hat J S^{-1})

は、二つの複素対称行列の積として表される。

さらに、この構成では \(S\) は正則であり、各 \(K_{n_j}\) も正則であるため、\(S\hat K S^{\top}\) は必ず非特異である。また、\(\hat J\) が非特異であるのはすべてのジョルダンブロックの固有値 \(\lambda_j\) が \(0\) でない場合であり、その場合には第2因子も非特異となる。

この証明では、任意の行列 \(A\) をまずジョルダン標準形に移し、各ジョルダンブロックを \(K_m\) で反転することで対称行列 \(\hat J_m(\lambda)\) を作っている。そのため、共役正規行列の性質を利用する定理4.4.24には依存していない。したがって、これは系4.4.25を直接証明する別証明となる。

[行列解析4.4]ユニタリ合同と複素対称行列
この節の目次4.4.2 補題4.4 ユニタリ合同と複素対称行列複素エルミート行列と複素対称行列は、ともに複素平面における単位円板の解析写像の研究に現れる。もし \( f \) が単位円板上の複素解析関数で、正規化条件 \( f(0) = 0...


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