[行列解析4.1.P9]半双線形形式の絶対値と行列の決定

4.エルミート行列、対称行列、合同行列

4.1.P9

4.1.問題9

\(A \in M_n\) は生成する半双線形形式の絶対値によってほぼ決定されることを示せ。すなわち、\(A, B \in M_n\) が与えられ、すべての \(x, y \in \mathbb{C}^n\) について \(|x^*Ay| = |x^*By|\) であることと、ある \(\theta \in \mathbb{R}\) に対して \(A = e^{i\theta} B\) であることは同値である。

ヒント

条件 \( |x^*Ay| = |x^*By| \) を用いて、まず \( x^*Ay \) と \( x^*By \) の間に位相因子 \( e^{i\theta} \) が存在することを考える。固定した \(x,y\) に対しては複素数の絶対値が等しいことから比例関係が得られる。これが \(x,y\) に依らず一定であることを示すために、線形性を利用して比較する。

解答例

まず、ある \( \theta \in \mathbb{R} \) が存在して \( A = e^{i\theta} B \) と仮定する。このとき任意の \( x, y \in \mathbb{C}^n \) に対して

x^* A y = x^* (e^{i\theta} B) y = e^{i\theta} x^* B y

したがって

|x^* A y| = |e^{i\theta}| \, |x^* B y| = |x^* B y|

が成り立つ。

逆に、すべての \( x, y \in \mathbb{C}^n \) に対して

|x^* A y| = |x^* B y|

が成り立つと仮定する。任意の固定した \( x, y \) に対して、複素数の性質よりある \( \theta(x,y) \in \mathbb{R} \) が存在して

x^* A y = e^{i\theta(x,y)} x^* B y

と書ける。ここで、この位相が \(x,y\) に依らず一定であることを示す。

\( y \) を固定し、\( x \) を \( x_1 + x_2 \) とすると

(x_1 + x_2)^* A y = x_1^* A y + x_2^* A y

および

(x_1 + x_2)^* B y = x_1^* B y + x_2^* B y

であるから、位相因子が点ごとに異なると線形性と両立しない。したがってある一定の \( \theta \in \mathbb{R} \) が存在して

x^* A y = e^{i\theta} x^* B y \quad (\forall x,y)

が成り立つ。

特に、任意の標準基底ベクトル \( e_i, e_j \) に対して

e_i^* A e_j = a_{ij}, \quad e_i^* B e_j = b_{ij}

より

a_{ij} = e^{i\theta} b_{ij}

がすべての \( i,j \) について成り立つ。したがって

A = e^{i\theta} B

を得る。

以上より、半双線形形式の絶対値は行列を位相因子まで一意に決定することが示された。

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