4.1.P8
4.1.問題8
行列 \(A = \begin{pmatrix}1 & 1\\ 0 & 1\end{pmatrix}\) を考え、すべての \(x \in \mathbb{C}^2\) について \(|x^*Ax| = |x^*A^{\top} x|\) であることを示せ。
これにより、生成するエルミート形式の絶対値によって行列は決定されないことがわかる。
ヒント
与えられた行列 \( A \) に対して \( x^*Ax \) を具体的に計算し、その共役との関係を調べる。特に複素数の絶対値は共役を取っても変わらないこと、すなわち \( |z| = |\overline{z}| \) を用いるとよい。
解答例
\( A = \begin{pmatrix}1 & 1\\ 0 & 1\end{pmatrix} \) とし、\( x = \begin{pmatrix}x_1 \\ x_2\end{pmatrix} \in \mathbb{C}^2 \) とおく。このとき
x^* A x
= \begin{pmatrix} \overline{x_1} & \overline{x_2} \end{pmatrix}
\begin{pmatrix}1 & 1\\ 0 & 1\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}x_1 \\ x_2\end{pmatrix}
= \overline{x_1}(x_1 + x_2) + \overline{x_2} x_2
したがって
x^* A x
= |x_1|^2 + \overline{x_1}x_2 + |x_2|^2
同様に \( A^{\top} = \begin{pmatrix}1 & 0\\ 1 & 1\end{pmatrix} \) に対して
x^* A^{\top} x
= \overline{x_1}x_1 + \overline{x_2}(x_1 + x_2)
= |x_1|^2 + \overline{x_2}x_1 + |x_2|^2
ここで
x^* A^{\top} x = \overline{\,x^* A x\,}
が成り立つことに注意する。したがって複素数の性質より
|x^* A x| = |\overline{x^* A x}| = |x^* A^{\top} x|
が任意の \( x \in \mathbb{C}^2 \) に対して成り立つ。
しかしながら \( A \ne A^{\top} \) であるため、二次形式の絶対値 \( |x^*Ax| \) の情報だけでは行列 \( A \) を一意に決定することはできない。

[行列解析4.1]エルミート行列の性質と特徴 (Properties and characterizations of Hermitian matrices)
4.1.1 定義(エルミート行列)4.1.2 定理(テプリッツ分解)4.1.3 定理4.1.4 定理4.1.5 定理4.1.6 定理4.1.7 定理4.1.8 定理4.1.9 定義(正定値・半正定値・不定値)4.1.10 定理4.1.11 ...
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