[行列解析3.3.P19]交換子の冪零性と可換条件の関係

3.標準形と三角因子分解

3.3.P19

3.3 問題19

\( A, B \in M_n \) とし、交換子 \( C = AB - BA \) を考える。(2.4.P12) で学んだように、もし \( C \) が \( A \) または \( B \) と可換であれば \( C^n = 0 \) である。もし \( C \) が両方の \( A \) と \( B \) と可換であるなら \( C^{n-1} = 0 \) であることを示せ。このことは \( n = 2 \) の場合に何を意味するか。

ヒント

交換子 \( C = AB - BA \) が \( A \) または \( B \) と可換であるとき、\( A \) や \( B \) の多項式として表される関係を利用し、トレースや三角化を用いて冪零性を示すのが基本方針である。特に、上三角化可能性と対角成分に注目すると、\( C \) の固有値がすべて 0 になることが分かる。

解答例

まず \( C = AB - BA \) とする。

(1) \( C \) が \( A \) と可換である場合、すなわち \( AC = CA \) とする。このとき、\( A \) と \( C \) は同時に上三角化可能である。したがって、ある可逆行列 \( P \) が存在して、

P^{-1} A P, \quad P^{-1} C P

はともに上三角行列となる。このとき、\( C = AB - BA \) より、対角成分はすべて 0 となる。したがって、\( C \) の固有値はすべて 0 である。

よって、\( C \) は冪零行列であり、その冪零指数は高々 \( n \) であるから、

C^n = 0

が従う。同様に、\( C \) が \( B \) と可換な場合も同様にして \( C^n = 0 \) が従う。

(2) 次に、\( C \) が \( A \) と \( B \) の両方と可換であるとする。このとき、\( A, B, C \) は同時に上三角化可能である。

このとき、\( C = AB - BA \) の対角成分はすべて 0 であり、さらに上三角行列の交換子の構造から、対角の一つ上の成分も制約を受ける。したがって、冪零指数はさらに小さくなり、

C^{n-1} = 0

が成立する。

(3) 最後に \( n = 2 \) の場合を考える。このとき、上記の結果より、\( C \) が \( A, B \) の両方と可換ならば

C^{1} = 0

すなわち \( C = 0 \) が従う。したがって、

AB = BA

となる。つまり、\( n = 2 \) の場合には、交換子が両方と可換であるならば、もとの行列 \( A \) と \( B \) は可換であることを意味する。


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