[行列解析3.3.P16]可換行列と多項式表示の限界

3.標準形と三角因子分解

3.3.P16

3.3 問題16

\( A, B, C \in M_n \) とし、多項式 \( p_1(t), p_2(t) \) が存在して \( A = p_1(C), B = p_2(C) \) であるとする。

このとき \( A \) と \( B \) は可換である。

すべての可換な行列の組がこのようにして得られるのだろうか。

次のように、ある3×3の可換な行列の組が第三の行列の多項式としては表せない構成について詳しく説明せよ。

(a) \( A = J_2(0) \oplus J_1(0), B = J_3(0)^2 \) とする。このとき \( AB = BA = A^2 = B^2 = 0 \) であり、\(\{I, A, B\}\) は \( \mathcal{A}(A, B) \)(\( A, B \) が生成する代数)の基底であり、\(\dim \mathcal{A}(A, B) = 3\) であることを示せ。

(b) もし \( C \in M_3 \) と多項式 \( p_1(t), p_2(t) \) が存在して \( A = p_1(C), B = p_2(C) \) であるなら、\( \mathcal{A}(A, B) \subset P(C) \) だから \(\dim P(C) \geq 3\)、さらに \(\dim P(C) = 3\)、したがって \( \mathcal{A}(A, B) = P(C) \) である。

(c) \( C = \gamma I + \alpha A + \beta B \) とすると、\((C - \gamma I)^2 = 0\)、すなわち \( C \) の最小多項式の次数は高々2であり、\(\dim P(C) \leq 2\) となる。これは矛盾である。

ヒント

多項式で表された行列は同じ行列の冪の組合せなので必ず可換になる。逆が成り立たない例として、生成される代数の次元に注目する。特に \( P(C) \) の次元は最小多項式の次数に等しいことを用いる。

解答例

まず、\( A = p_1(C), B = p_2(C) \) と表されるとき、\( A \) と \( B \) は \( p_1(C)p_2(C)=p_2(C)p_1(C) \) より可換である。

以下では逆が成り立たない例を構成する。

(a) \( A = J_2(0) \oplus J_1(0),\ B = J_3(0)^2 \) とする。このとき各行列は冪零であり、

A^2=0,\quad B^2=0

が成り立つ。また計算により \( AB=BA=0 \) である。

したがって、任意の多項式による組合せは \( xI + yA + zB \) の形に書けるので、

\mathcal{A}(A,B)=\mathrm{span}\{I,A,B\}

となる。\( I,A,B \) は明らかに線形独立であるから、 \( \dim \mathcal{A}(A,B)=3 \) である。

(b) もしある \( C \in M_3 \) と多項式 \( p_1(t),p_2(t) \) によって \( A=p_1(C), B=p_2(C) \) と書けるとすると、生成代数について \( \mathcal{A}(A,B)\subset P(C) \) が成り立つ。

よって \( \dim P(C)\ge 3 \) であるが、一般に \( \dim P(C)\le 3 \) であるから、

\dim P(C)=3

となり、 \( \mathcal{A}(A,B)=P(C) \) である。

(c) このとき \( C \in \mathcal{A}(A,B) \) であるから、

C=\gamma I+\alpha A+\beta B

と書ける。ここで \( A^2=B^2=AB=BA=0 \) を用いると、

(C-\gamma I)^2 = (\alpha A+\beta B)^2 = 0

となる。したがって \( C \) の最小多項式は高々2次である。

よって \( \dim P(C)\le 2 \) となるが、これは (b) の結果と矛盾する。

以上より、可換な行列の組であっても、必ずしも同一行列の多項式として表されるとは限らないことが分かる。


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