3.2.P32
3.2問題32
\( A, B \in M_n \) とし、\( C = AB - BA \) とおく。さらに \( A \) が \( C \) と可換とする。もし \( n = 2 \) ならば、\( A \) と \( B \) は同時に上三角化可能であることを示せ。(2.4.P12(f)) より、\( n \gt 2 \) の場合には同時三角化は一般には成り立たないことがわかる。
ヒント
\( C = AB-BA \) とし、さらに \( AC = CA \) と仮定する。ここで \( n=2 \) の場合を考える。まず \( C=0 \) ならば \( A \) と \( B \) は可換であり、複素数体上では可換な行列は同時三角化可能である。
次に \( C \neq 0 \) の場合を考える。このとき \( AC=CA \) であるから、\( C \) の固有空間は \( A \) によって不変になる。\( 2\times2 \) 行列では非零冪零行列は1次元の核を持つので、その核を用いて共通の不変部分空間を構成できる。
共通の不変1次元部分空間が存在すれば、その基底を最初に取ることで \( A \) と \( B \) を同時に上三角形に書くことができる。
解答例
\( A,B\in M_2 \) とし、 \( C = AB-BA \) とおく。また \( AC = CA \) と仮定する。
まず \( C=0 \) の場合を考える。このとき
AB=BA
である。複素数体上では可換な有限次元行列は同時三角化可能であるため、この場合は \( A \) と \( B \) は同時に上三角化できる。
次に \( C\neq0 \) の場合を考える。一般に交換子はトレースが 0 であるから
\mathrm{tr}(C)=0
が成立する。したがって \( 2\times2 \) 行列では \( C \) は冪零行列であり、階数は 1 以下である。
よって \( C \) の核は 1 次元である。すなわちある非零ベクトル \( v \) が存在して \( Cv=0 \) となる。
ここで \( AC=CA \) を用いると
C(Av)=ACv=0
となる。したがって \( Av \) も \( \ker C \) に属するので \( A(\ker C)\subset \ker C \) である。
一方、
AB-BA=C
を \( v \) に作用させると
ABv - BAv = Cv = 0
となり \( ABv = BAv \) が得られる。上で \( Av \in \ker C \) であることから、\( \ker C \) は \( B \) によっても不変である。
したがって \( \ker C \) は \( A \) と \( B \) の共通の不変部分空間であり、その次元は 1 である。
この部分空間の基底を最初の基底ベクトルとして選ぶと、ある基底に関して
A=
\begin{pmatrix}
* & *\\
0 & *
\end{pmatrix},
\quad
B=
\begin{pmatrix}
* & *\\
0 & *
\end{pmatrix}
の形となる。すなわち \( A \) と \( B \) は同時に上三角化可能である。
以上より、\( n=2 \) の場合には仮定 \( AC=CA \) のもとで \( A \) と \( B \) は同時三角化可能である。一方、\( n>2 \) の場合には同様の性質は一般には成り立たない。
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