[行列解析3.2.P31]不変部分空間と可換行列の値域の同値性

3.標準形と三角因子分解

3.2.P31

3.2問題31

\( A \in M_n \)、部分空間 \( S \subset \mathbb{C}^n \) が与えられたとする。

\( S \) が \( A \) の不変部分空間であることと、ある \( B \in M_n \) が存在して \( AB = BA \) かつ \( S \) が \( B \) の値域であることが同値であることを示せ。

ヒント

示すべきことは、部分空間 \( S \subset \mathbb{C}^n \) が行列 \( A \) の不変部分空間であることと、ある行列 \( B \in M_n \) が存在して \( AB=BA \) かつ \( S=\mathrm{Im}\,B \) となることが同値であるという主張である。

まず \( AB=BA \) かつ \( S=\mathrm{Im}\,B \) ならば、任意の \( s\in S \) は \( s=Bx \) と書ける。したがって \( As=A(Bx)=B(Ax) \) となり、これは再び \( B \) の像に属する。よって \( AS\subset S \) である。

逆に \( S \) が \( A \) の不変部分空間であれば、適当な基底を選ぶことで \( A \) を上三角ブロック行列に書くことができる。この基底に関して、\( S \) がちょうど像になるようなブロック行列 \( B \) を構成し、さらにブロック計算により \( AB=BA \) が成立することを確かめる。

解答例

まず、ある \( B\in M_n \) が存在して \( AB=BA \) かつ \( S=\mathrm{Im}\,B \) であると仮定する。

任意の \( s\in S \) に対して \( s=Bx \) と書ける。すると \( As=A(Bx)=B(Ax) \) が成り立つ。したがって \( As \) も \( B \) の像に属するので \( As\in S \) である。よって \( AS\subset S \) が従い、\( S \) は \( A \) の不変部分空間である。

逆に、\( S \) が \( A \) の不変部分空間であると仮定する。\( k=\dim S \) とする。\( S \) の基底を最初に並べた基底を取ると、この基底に関する \( A \) の行列表現は

A=
\begin{pmatrix}
A_{11} & A_{12}\\
0 & A_{22}
\end{pmatrix},
\quad A_{11}\in M_k

の形になる。ここで \( A_{11} \) は \( S \) 上の作用を表す行列である。

このとき次の行列を定める。

B=
\begin{pmatrix}
I_k & 0\\
0 & 0
\end{pmatrix}

この行列の値域は、最初の \( k \) 成分のみが自由で残りが 0 となるベクトル全体であり、これはちょうど部分空間 \( S \) に一致する。すなわち \( \mathrm{Im}\,B=S \) である。

次に \( AB \) と \( BA \) を計算する。

AB=
\begin{pmatrix}
A_{11} & A_{12}\\
0 & A_{22}
\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}
I_k & 0\\
0 & 0
\end{pmatrix}
=
\begin{pmatrix}
A_{11} & 0\\
0 & 0
\end{pmatrix}
BA=
\begin{pmatrix}
I_k & 0\\
0 & 0
\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}
A_{11} & A_{12}\\
0 & A_{22}
\end{pmatrix}
=
\begin{pmatrix}
A_{11} & A_{12}\\
0 & 0
\end{pmatrix}

しかし \( S \) が \( A \) の不変部分空間であるため、上右ブロック \( A_{12} \) は 0 になる。したがって

A=
\begin{pmatrix}
A_{11} & 0\\
0 & A_{22}
\end{pmatrix}

となり、このとき \( AB=BA \) が成立する。

以上より、\( S \) が \( A \) の不変部分空間であることと、ある \( B \) が存在して \( AB=BA \) かつ \( S=\mathrm{Im}\,B \) となることは同値である。


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