3.2.P29
3.2問題29
\( \lambda \in \mathbb{C} \)、\( A = J_k(\lambda) \)、\( B = [b_{ij}] \in M_k \) とし、\( C = AB - BA \) とする。
もし \( C = 0 \) と仮定すると、(3.2.4.2) より \( B \) は上三角テプリッツ行列となり、すべての固有値は同じになる。しかし、ここでは弱い仮定 \( AC = CA \) を置く。
(a) このとき \( C \) が上三角テプリッツかつ冪零、すなわち \( C = [\gamma_{j-i}]_{i,j=1}^k \) であり、\(\gamma_{-k+1} = \cdots = \gamma_0 = 0\)、\(\gamma_1, \ldots, \gamma_{k-1} \in \mathbb{C}\) であることを説明せよ。
(b) この形を用いて、\( B \) が上三角(ただしテプリッツではない)であり、その固有値が
b_{11},\; b_{11} + \gamma_1,\; b_{11} + 2\gamma_1,\; \ldots,\; b_{11} + (k-1)\gamma_1
となり、等差数列をなすことを示せ。
ヒント
行列 \( C = AB - BA \) を考える。仮定 \( AC = CA \) は、\( A \) と \( C \) が可換であることを意味する。ここで \( A \) をジョルダンブロック \( J_k(0) \) とみなすと、\( A \) と可換な行列は上三角テプリッツ行列になることが知られている。したがって \( C \) は上三角テプリッツ行列となる。
さらに \( C = AB-BA \) は交換子であるため、その対角成分はすべて 0 となり、したがって \( C \) は冪零である。よって \( C \) は \( C=[\gamma_{j-i}] \) という上三角テプリッツ形を持ち、下三角側および対角はすべて 0 になる。
この形を \( AB-BA=C \) に代入して成分比較を行うと、\( B \) の対角成分は一定差で増加することが分かる。その結果、固有値は等差数列を形成する。
解答例
(a) 行列 \( C = AB-BA \) とし、仮定として \( AC=CA \) を置く。
ここで \( A \) を \( k \times k \) のジョルダンブロック \( A=J_k(0) \) とする。このとき \( A \) と可換な行列はすべて上三角テプリッツ行列になることが知られている。したがって \( AC=CA \) から \( C \) は上三角テプリッツ行列である。
C = [\gamma_{j-i}]_{i,j=1}^{k}
さらに \( C = AB-BA \) は交換子であるため対角成分はすべて 0 である。よって \( \gamma_{0}=0 \) であり、また上三角形になるので \( \gamma_{-k+1}=\cdots=\gamma_{0}=0 \) が成立する。
したがって \( C \) は
C =
\begin{pmatrix}
0 & \gamma_1 & \gamma_2 & \cdots & \gamma_{k-1}\\
0 & 0 & \gamma_1 & \cdots & \gamma_{k-2}\\
0 & 0 & 0 & \ddots & \vdots\\
\vdots & \vdots & \vdots & \ddots & \gamma_1\\
0 & 0 & 0 & \cdots & 0
\end{pmatrix}
という上三角テプリッツかつ冪零行列となる。
(b) 次に \( AB-BA=C \) を成分で比較する。
ジョルダンブロック \( A=J_k(0) \) は上副対角に 1 を持つ行列である。
A=
\begin{pmatrix}
0&1&0&\cdots&0\\
0&0&1&\cdots&0\\
0&0&0&\ddots&0\\
\vdots&\vdots&\vdots&\ddots&1\\
0&0&0&\cdots&0
\end{pmatrix}
このとき \( AB-BA=C \) の対角成分を比較すると
b_{i+1,i+1}-b_{ii}=\gamma_1
が得られる。したがって対角成分は
b_{ii}=b_{11}+(i-1)\gamma_1
となる。
この結果、\( B \) は上三角行列であり、その固有値は対角成分に一致するため
b_{11},\;
b_{11}+\gamma_1,\;
b_{11}+2\gamma_1,\;
\ldots,\;
b_{11}+(k-1)\gamma_1
となり、固有値は等差数列をなすことが分かる。
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