[行列解析3.2.P20]積行列ABとBAが相似となる条件

3.標準形と三角因子分解

3.2.P20

3.2問題20

\(A,B\in M_n\) を与える。

(a) \(AB\) が \(BA\) に相似であることは、すべての \(k=1,2,\dots,n\) について \(\mathrm{rank}(AB)^k=\mathrm{rank}(BA)^k\) が成り立つことと同値であることを示せ。

(b) \(r=\mathrm{rank}\,A=\mathrm{rank}\,AB=\mathrm{rank}\,BA\) とすると、\(AB\) は \(BA\) に相似であることを示せ。ヒント:任意の正則 \(S,T\) に対して \(A\) を \(S A T\)、\(B\) を \(T^{-1} B S^{-1}\) に置き換えられることを説明し、適切な \(S,T\) を選んで \(S A T = I_r\oplus 0_{n-r}\) の形にする。その後 \(A=I_r\oplus 0_{n-r}\) と \(B=[B_{ij}]_{i,j=1}^2\) を用いて計算し、各種ランク等式を導け。

ヒント

(a) 相似な行列はすべての冪について同じランクをもつことを用いる。またジョルダン標準形では、固有値 \(0\) に対応するジョルダンブロックのサイズが \((AB)^k\) や \((BA)^k\) のランクに影響することを利用するとよい。

(b) 行列 \(A\) をランク標準形に変換する。すなわち正則行列 \(S,T\) を用いて \(SAT=I_r\oplus 0_{n-r}\) の形にする。この変換に対応して \(B\) を \(T^{-1}BS^{-1}\) に置き換えても \(AB\) と \(BA\) の相似性は変わらない。その後、ブロック行列として \(AB\) と \(BA\) を計算し、ランク条件から必要な等式を導く。

解答例

(a) まず \(AB\) と \(BA\) が相似であると仮定する。このときある正則行列 \(P\) が存在して

BA = P^{-1}(AB)P

が成り立つ。したがって任意の正整数 \(k\) に対して

(BA)^k = P^{-1}(AB)^k P

となるので、相似な行列は同じランクをもつことから \( \mathrm{rank}(AB)^k=\mathrm{rank}(BA)^k \) がすべての \(k=1,2,\dots,n\) について成り立つ。

逆に、すべての \(k=1,2,\dots,n\) について \( \mathrm{rank}(AB)^k=\mathrm{rank}(BA)^k \) が成り立つと仮定する。行列のジョルダン標準形では、固有値 \(0\) に対応するジョルダンブロックのサイズが \((AB)^k\) のランクを決定する。具体的には

\mathrm{rank}(A^k)=n-\dim\ker(A^k)

であり、\(\ker(A^k)\) の次元は固有値 \(0\) に対応するジョルダンブロックのサイズ分布によって決まる。したがって \((AB)^k\) と \((BA)^k\) のランクがすべて一致するならば、固有値 \(0\) に関するジョルダンブロック構造も一致する。

一方、固有値 \(0\) 以外については \(AB\) と \(BA\) は同じ固有値を同じ重複度で共有することが知られている。したがって両者はすべての固有値について同じジョルダンブロック構造をもつ。よって

AB \sim BA

が従う。

(b) 仮定より \( r=\mathrm{rank}\,A=\mathrm{rank}\,AB=\mathrm{rank}\,BA \) である。任意の正則行列 \(S,T\) に対して

A \rightarrow SAT,\qquad
B \rightarrow T^{-1}BS^{-1}

と置き換えると

AB \rightarrow S(AB)S^{-1},\qquad
BA \rightarrow T^{-1}(BA)T

となるので、\(AB\) と \(BA\) の相似性は変わらない。したがって適当な \(S,T\) を選んで

A = I_r \oplus 0_{n-r}

と仮定してよい。このとき \(B\) をブロック行列

B=
\begin{bmatrix}
B_{11} & B_{12}\\
B_{21} & B_{22}
\end{bmatrix}

と書くと、積は

AB=
\begin{bmatrix}
B_{11} & B_{12}\\
0 & 0
\end{bmatrix},\qquad
BA=
\begin{bmatrix}
B_{11} & 0\\
B_{21} & 0
\end{bmatrix}

となる。仮定より \( \mathrm{rank}(AB)=r \) であるから、上の形から \( \mathrm{rank}[B_{11}\;B_{12}]=r \) である。同様に \( \mathrm{rank}(BA)=r \) より \( \mathrm{rank}\begin{bmatrix}B_{11}\\B_{21}\end{bmatrix}=r \) が成り立つ。

これらの条件から、\(AB\) と \(BA\) は同じランク列 \( \mathrm{rank}(AB)^k=\mathrm{rank}(BA)^k \) を満たすことが分かる。したがって (a) の結果より

AB \sim BA

が従う。


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