7.7.17 正定値行列のアダマール積に関する不等式
定理 7.7.17
A, B ∈ M_n を正定値行列とする。次が成り立つ:
\text{(a)} \quad A^{-1} \circ B^{-1} \succeq (A \circ B)^{-1}
\text{(b)} \quad A^{-1} \circ A^{-1} \succeq (A \circ A)^{-1}
\text{(c)} \quad A^{-1} \circ A \succeq I \succeq (A^{-1} \circ A)^{-1}
証明
(a) 直前の定理およびシュール積定理により、
\begin{bmatrix} A & I_n \\ I_n & A^{-1} \end{bmatrix} \circ
\begin{bmatrix} B & I_n \\ I_n & B^{-1} \end{bmatrix} =
\begin{bmatrix} A \circ B & I_n \\ I_n & A^{-1} \circ B^{-1} \end{bmatrix}
が正半定値であることが従う。従って、(7.5.3(c)) および (7.7.10(a)) より、 \( A^{-1} \circ B^{-1} \succeq (A \circ B)^{-1} \) が成り立つ。
(b) は (a) において B = A とすれば得られる。
(c) は (a) において B = A^{-1} とし、(7.7.10(d)) を用いれば得られる。
本定理の帰結として得られる最終結果は、(7.5.3(a)) の定量的バージョンを与える下界を提供する。別の下界については (7.5.P24) を参照されたい。
行列解析の総本山

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