[行列解析5.4.5]有限次元ベクトル空間におけるノルムの同値性とその帰結

5.4.5

系 5.4.5. 有限次元の実または複素ベクトル空間 \(V\) 上に与えられたノルム \( \lVert \cdot \rVert_{\alpha} \) と \( \lVert \cdot \rVert_{\beta} \) に対して、有限の正の定数 \(C_{m}, C_{M}\) が存在し、すべての \(x \in V\) に対して次が成り立つ。

C_{m}\lVert x \rVert_{\alpha} \leq \lVert x \rVert_{\beta} \leq C_{M}\lVert x \rVert_{\alpha}

演習問題 1. \(x = [x_{1}, x_{2}]^{T} \in \mathbb{R}^{2}\) とし、\(\mathbb{R}^{2}\) 上の次のノルムを考える。

\lVert x \rVert_{\alpha} \equiv \lVert [10x_{1}, x_{2}]^{T} \rVert_{\infty}, \\
\lVert x \rVert_{\beta} \equiv \lVert [x_{1}, 10x_{2}]^{T} \rVert_{\infty}

このとき次の関数を定義する。

f(x) = \bigl(\lVert x \rVert_{\alpha} \lVert x \rVert_{\beta}\bigr)^{1/2}

これが \(\mathbb{R}^{2}\) 上の「プレ・ノルム(pre-norm)」であり、ノルムではないことを示せ。(参考: (5.4.P15))

ヒント: \(f([1,1]^{T}), f([0,1]^{T}), f([1,0]^{T})\) を考えること。

演習問題 2. もし \( \lVert \cdot \rVert_{\alpha_{1}}, \ldots, \lVert \cdot \rVert_{\alpha_{k}} \) が \(V\) 上のノルムであるならば、次の関数を考える。

f(x) = \bigl(\lVert x \rVert_{\alpha_{1}} \cdots \lVert x \rVert_{\alpha_{k}}\bigr)^{1/k}, \\\quad 
h(x) = \min \{\lVert x \rVert_{\alpha_{1}}, \ldots, \lVert x \rVert_{\alpha_{k}}\}

これらは \(V\) 上のプレ・ノルムであり、必ずしもノルムではないことを示せ。

(5.4.5) の重要な帰結として、有限次元の複素ベクトル空間におけるベクトル列の収束は、使用するノルムに依存しないという事実が得られる。


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