[行列解析5.4]ノルムの解析的性質

5.ベクトルと行列のノルム

5.4

5.4 ノルムの解析的性質

前の2つの節の例からわかるように、実または複素ベクトル空間上の多くの実数値関数がノルムの公理を満たすことができる。これは良いことであり、なぜなら目的によっては、あるノルムが別のノルムよりも便利であったり適切であったりするからである。

例えば、\( l_2 \)-ノルムは原点を除いて連続的に微分可能であるため、最適化問題に便利である。一方、\( l_1 \)-ノルムは微分可能な範囲が狭いものの、統計学ではよく用いられる。これは、古典的な回帰推定量よりもロバストな推定量を導くことができるからである。

また、\( l_\infty \)-ノルムは要素ごとの収束を直接監視できるため、最も自然に使える場合が多い。しかし解析的・代数的には扱いにくいことがある。

実際の応用では、理論の基礎として最も自然なノルムと、特定の状況で最も計算しやすいノルムが一致しない場合がある。そのため、異なる2つのノルムの間にどのような関係があるのかを理解することは重要である。幸いにも、有限次元の場合には、すべてのノルムはある強い意味で「同値」である。

解析における基本的な概念は数列の収束である。ノルム付き線形空間において、収束は次のように定義される。


行列解析の総本山

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