[行列解析4.4.P21]実ジョルダンブロックから二つの実対称行列を作る

4.エルミート行列、対称行列、合同行列

4.4.P21

4.4.問題21

実ジョルダンブロック \(C_m(a,b)\) と反転行列 \(K_{2m}\)(0.9.5.1)を考える。

なぜ \(\hat{C}_m(a,b) = K_{2m} C_m(a,b)\) が実対称であるか説明せよ。

行列 \(A \in M_n(\mathbb{R})\) とし、\(S \in M_n(\mathbb{R})\) が正則で \(S^{-1} A S\) が実ジョルダン行列 (3.4.1.6) に等しいとする。

\(\hat{J} = K_{2n_1} C_{n_1}(a_1,b_1) \oplus \cdots \oplus K_{2n_p} C_{n_p}(a_p,b_p) \oplus K_{m_1} J_{m_1}(\mu_1) \oplus \cdots \oplus K_{m_r} J_{m_r}(\mu_r)\)、

\(\hat{K} = K_{2n_1} \oplus \cdots \oplus K_{2n_p} \oplus K_{m_1} \oplus \cdots \oplus K_{m_r}\)

とすると、なぜ \(A = (S \hat{K} S^T)(S^{-T} \hat{J} S^{-1})\) が二つの実対称行列の積として表せるか説明せよ。

ヒント

反転行列 \(K_m\) は対称行列であり、\(K_m^{-1}=K_m\) を満たす。実ジョルダンブロック \(C_m(a,b)\) については、ブロックの配置と反転行列の働きから \(K_{2m}C_m(a,b)\) が転置しても変わらないことを確認すればよい。実固有値に対応するジョルダンブロックについても同様に \(K_mJ_m(\mu)\) は対称である。

そのうえで実ジョルダン標準形を \(J=S^{-1}AS\) とおき、各ブロックに \(K\) を掛けて得られる行列を \(\hat J\)、各 \(K\) の直和を \(\hat K\) とする。すると \(J=\hat K\hat J\) となる。この式に \(A=SJS^{-1}\) を代入し、\(I=S^TS^{-T}\) を挿入すると、求める積の形が得られる。

解答例

まず、反転行列 \(K_m\) は、単位行列の列を逆順に並べた行列である。したがって

K_m^{\top}=K_m,\qquad K_m^{-1}=K_m.

が成り立つ。

実ジョルダンブロック \(C_m(a,b)\) は、\(2\times2\) ブロックを用いて表すと、対角ブロックが

C(a,b)=
\begin{pmatrix}
a&b\\
-b&a
\end{pmatrix}

であり、そのすぐ上のブロックに \(I_2\) が並ぶ形になっている。反転行列 \(K_{2m}\) を左から掛けると、ブロックの順序が反転する。このため、転置によって生じるブロックの反転とちょうど一致する。

実際、実ジョルダンブロックについて

C_m(a,b)^{\top}K_{2m}=K_{2m}C_m(a,b)

が成り立つ。したがって

\begin{aligned}
\hat C_m(a,b)^{\top}
&=\bigl(K_{2m}C_m(a,b)\bigr)^{\top}\\
&=C_m(a,b)^{\top}K_{2m}^{\top}\\
&=C_m(a,b)^{\top}K_{2m}\\
&=K_{2m}C_m(a,b)\\
&=\hat C_m(a,b).
\end{aligned}

となる。\(K_{2m}\) と \(C_m(a,b)\) はともに実行列なので、\(\hat C_m(a,b)\) は実対称行列である。

次に、\(A\) の実ジョルダン標準形を考える。仮定より \(S\) は実正則行列であり、

S^{-1}AS=J

と書ける。したがって

A=SJS^{-1}

である。

ここで、各実ジョルダンブロックについて \(K\) を左から掛けたものを並べて \(\hat J\) を定めている。また、

\hat K
=
K_{2n_1}\oplus\cdots\oplus K_{2n_p}
\oplus K_{m_1}\oplus\cdots\oplus K_{m_r}

である。各 \(K\) は \(K^{-1}=K\) を満たすので、各ブロックについて \(J=K(KJ)\) が成り立つ。したがって全体として

J=\hat K\hat J

となる。

よって \(A=SJS^{-1}\) にこの関係を代入すると、

A=S\hat K\hat J S^{-1}

を得る。ここで \(S^TS^{-\top}=I\) であるから、途中にこの単位行列を挿入すると、

\begin{aligned}
A
&=S\hat K\hat J S^{-1}\\
&=S\hat K(S^{\top}S^{-\top})\hat J S^{-1}\\
&=(S\hat K S^{\top})(S^{-\top}\hat J S^{-1}).
\end{aligned}

これが問題の積表示である。

あとは二つの因子が実対称であることを確認すればよい。まず \(\hat K\) は対称行列の直和なので、

\hat K^{\top}=\hat K

である。したがって

(S\hat K S^{\top})^{\top}
=S\hat K S^{\top}

となり、\(S\hat K S^T\) は実対称行列である。

一方、\(\hat J\) は、先ほど示した \(K_{2m}C_m(a,b)\) と、実ジョルダンブロックについての \(K_mJ_m(\mu)\) の直和である。各ブロックは実対称なので、

\hat J^{\top}=\hat J

が成り立つ。したがって

\begin{aligned}
(S^{-T}\hat J S^{-1})^{\top}
&=(S^{-1})^{\top}\hat J^{\top}(S^{-T})^{\top}\\
&=S^{-T}\hat J S^{-1}.
\end{aligned}

となるので、\(S^{-T}\hat J S^{-1}\) も実対称行列である。

以上より、\(A\) は二つの実対称行列の積

A=(S\hat K S^{\top})(S^{-\top}\hat J S^{-1})

として表される。さらに \(S\)、\(\hat K\) がともに正則であるため、第一因子 \(S\hat K S^{\top}\) は必ず正則である。このことから、二つの実対称行列のうち少なくとも一方を非特異に選べることも分かる。

[行列解析4.4]ユニタリ合同と複素対称行列
この節の目次4.4.2 補題4.4 ユニタリ合同と複素対称行列複素エルミート行列と複素対称行列は、ともに複素平面における単位円板の解析写像の研究に現れる。もし \( f \) が単位円板上の複素解析関数で、正規化条件 \( f(0) = 0...


行列解析の総本山

総本山の目次📚

[行列解析]総本山📚
行列解析の総本山。行列解析の内容を網羅的かつ体系的に整理しています。線形代数の学習を一通り終えた方が、次のステップとして取り組むのに最適です。行列に関する不等式を研究するには、行列解析の知識が欠かせません。

記号の意味🔎

[行列解析9.0]主要な記号一覧🔎
行列解析で使用している記号や用語の簡単な説明です。

コメント

タイトルとURLをコピーしました