4.4.P4
4.4.問題4
\(A\) が実対称の場合、(4.4.4c) は何を意味するか?
実対称行列のスペクトル分解 (2.5.11a) とどのように関係するか?
ヒント
\(A\) が実対称なら、オートンの定理で得られる特異値分解と、実対称行列のスペクトル分解を比較する。特異値は固有値の絶対値であることに注意し、負の固有値の符号はユニタリ対角行列に吸収されることを利用する。
解答例
\(A\) を実対称行列とする。このとき、スペクトル定理より実直交行列 \(Q\) が存在して、
Q^{\top}AQ
=
\operatorname{diag}(\lambda_1,\ldots,\lambda_n)
となる。ここで、\(\lambda_1,\ldots,\lambda_n\) は \(A\) の固有値である。
一方、オートンの定理 (4.4.4(c)) によれば、\(A\) が複素対称行列であることから、ユニタリ行列 \(U\) と非負対角行列 \(\Sigma\) が存在して、
A
=
U\Sigma U^{\top}
と書ける。
\(A\) が実対称である場合、その特異値は固有値の絶対値に一致するので、
\Sigma
=
\operatorname{diag}
(
|\lambda_1|,
\ldots,
|\lambda_n|
)
となる。
さらに、各固有値について
\lambda_i = \varepsilon_i|\lambda_i|, \qquad \varepsilon_i=\pm1
と表せるので、対角行列
E
=
\operatorname{diag}
(
1,
\ldots,
1,
i,
\ldots,
i
)
を適切に選べば、
E\Sigma E^{\top}
=
\operatorname{diag}
(
\lambda_1,
\ldots,
\lambda_n
)
となる。したがって、
A
=
(QE)\Sigma(QE)^{\top}
と書ける。
すなわち、実対称行列に対するオートンの定理は、スペクトル分解において負の固有値の符号をユニタリ対角行列へ吸収し、対角成分をすべて非負の特異値に置き換えた分解にほかならない。
したがって、実対称行列の場合には、オートンの定理はスペクトル分解と本質的に同値であり、複素対称行列に対する自然な一般化とみなすことができる。

[行列解析4.4]ユニタリ合同と複素対称行列
この節の目次4.4.2 補題4.4 ユニタリ合同と複素対称行列複素エルミート行列と複素対称行列は、ともに複素平面における単位円板の解析写像の研究に現れる。もし \( f \) が単位円板上の複素解析関数で、正規化条件 \( f(0) = 0...
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