[行列解析4.3.P14]固有値和の凹凸性の証明

4.エルミート行列、対称行列、合同行列

4.3.P14 

4.3.問題14

\( r \in \{1, \ldots , n\} \) とし、\( H_n \) を \( n \times n \) のエルミート行列の実ベクトル空間とする。与えられた \( A \in H_n \) に対して、その固有値を (4.2.1) のように順序づける。

(4.2.1)
\lambda_{\min} = \lambda_1 \leq \lambda_2 \leq \cdots \leq \lambda_{n-1} \leq \lambda_n = \lambda_{\max} 

ここで \( f_r(A) = \lambda_1(A) + \cdots + \lambda_r(A) \)、また \( g_r(A) = \lambda_{n-(r-1)}(A) + \cdots + \lambda_n(A) \) と定義する。

\( f_r \) が \( H_n \) 上で凹関数であり、\( g_r \) が \( H_n \) 上で凸関数であることを示せ。

ヒント

エルミート行列に対するミニマックス原理(Courant–Fischer の定理)を用いる。

特に、 \( f_r(A) \) は「\( r \) 次元部分空間上でのトレースの最小値」として表される。 この表示を用いると、各部分空間に対して線形な関数の最小値になっているため、 \( f_r \) が凹関数であることが分かる。

また、 \( g_r(A) = -f_r(-A) \) を用いれば、\( g_r \) の凸性も従う。

解答例

\( A \in H_n \) とする。 エルミート行列の固有値を

\lambda_1(A)\leq \lambda_2(A)\leq \cdots \leq \lambda_n(A)

と並べる。 まず \( f_r \) の凹性を示す。

Courant–Fischer の定理より、 \( r \) 個の最小固有値の和は

f_r(A)
=
\min_{\dim V=r}
\operatorname{tr}(P_VA)

と表される。ただし \( P_V \) は部分空間 \( V \) への直交射影である。

ここで \( A,B\in H_n \)、\( 0\leq t\leq 1 \) とする。 任意の \( r \) 次元部分空間 \( V \) に対して、 トレースの線形性より

\operatorname{tr}\bigl(P_V(tA+(1-t)B)\bigr)
=
t\,\operatorname{tr}(P_VA)
+
(1-t)\,\operatorname{tr}(P_VB)

が成り立つ。 したがって、

\begin{aligned}
f_r(tA+(1-t)B)
&=
\min_{\dim V=r}
\operatorname{tr}\bigl(P_V(tA+(1-t)B)\bigr)
\\
&=
\min_{\dim V=r}
\left(
t\,\operatorname{tr}(P_VA)
+
(1-t)\,\operatorname{tr}(P_VB)
\right)
\\
&\geq
t\min_{\dim V=r}\operatorname{tr}(P_VA)
+
(1-t)\min_{\dim V=r}\operatorname{tr}(P_VB)
\\
&=
t f_r(A)+(1-t)f_r(B)
\end{aligned}

を得る。 よって \( f_r \) は \( H_n \) 上の凹関数である。

次に \( g_r \) の凸性を示す。 エルミート行列 \( A \) の固有値を \( \lambda_1(A)\leq \cdots \leq \lambda_n(A) \) とすると、 \( -A \) の固有値は

-\lambda_n(A)\leq \cdots \leq -\lambda_1(A)

である。 したがって、

\begin{aligned}
f_r(-A)
&=
-\lambda_n(A)-\lambda_{n-1}(A)-\cdots-\lambda_{n-r+1}(A)
\\
&=
-g_r(A)
\end{aligned}

すなわち \( g_r(A)=-f_r(-A) \) である。

\( f_r \) は凹関数であるから、 \( A\mapsto f_r(-A) \) も凹関数であり、その負号を取った \( g_r \) は凸関数となる。 実際、

\begin{aligned}
g_r(tA+(1-t)B)
&=
-f_r(-(tA+(1-t)B))
\\
&=
-f_r(t(-A)+(1-t)(-B))
\\
&\leq
-tf_r(-A)-(1-t)f_r(-B)
\\
&=
tg_r(A)+(1-t)g_r(B)
\end{aligned}

となる。 よって \( g_r \) は \( H_n \) 上で凸関数である。

[行列解析4.3]エルミート行列に関する固有値の不等式
この節の目次4.3.1 定理(ヴェイアの定理)4.3.3 系4.3.5 系4.3.7 系4.3.9 系4.3.12 系4.3.15 系4.3.17 定理(Cauchy)4.3.21 定理4.3.26 定理4.3.28 定理4.3.34 系4...


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