4.3.15
系 4.3.15.
エルミート行列 \(A, B \in M_n\) を考える。このとき次が成り立つ。
λ_i(A) + λ_1(B) ≤ λ_i(A + B) ≤ λ_i(A) + λ_n(B), i = 1, …, n
(4.3.16) において、上側の等号が成立するのは、非ゼロベクトル \(x\) が存在して \(Ax = λ_i(A)x\)、\(Bx = λ_n(B)x\)、かつ \((A + B)x = λ_i(A + B)x\) を満たす場合に限られる。同様に、下側の等号が成立するのは、非ゼロベクトル \(x\) が存在して \(Ax = λ_i(A)x\)、\(Bx = λ_1(B)x\)、かつ \((A + B)x = λ_i(A + B)x\) を満たす場合に限られる。もし \(A\) と \(B\) が共通の固有ベクトルを持たないなら、(4.3.16) のすべての不等式は厳密な不等式となる。
証明.
(4.3.2a) において \(j = 0\)、(4.3.2b) において \(j = 1\) を取ればよい。
演習.
\(y \in \mathbb{C}^n\)、\(a \in \mathbb{R}\) が与えられたとする。このとき次の行列を考える。
K = \begin{bmatrix} 0_n & y \\ y^* & a \end{bmatrix} ∈ M_{n+1}
このとき、\(K\) の固有値は \(\frac{a \pm \sqrt{a^2 + 4y^*y}}{2}\) と \(n - 1\) 個のゼロ固有値であることを示せ。特に \(y \neq 0\) の場合、\(K\) はちょうど1つの正の固有値とちょうど1つの負の固有値を持つことを結論せよ。(ヒント:(1.2.P13(b)))
ワイルの不等式とその系は、エルミート行列に対する加法的なエルミート摂動に関するものである。さらに、エルミート行列から主要部分行列を取り出したり、あるいはそれを拡張してより大きなエルミート行列を作ることによっても固有値の不等式が得られる。次に述べる結果は、境界を付加したエルミート行列に関するコーシーの相互はさみ込み定理(しばしば分離定理とも呼ばれる)である。
行列解析の総本山

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