[行列解析4.2.P8]固有値の単調性の証明

4.エルミート行列、対称行列、合同行列

4.2.P8

4.2.問題8

\( A, B \in M_n \) がエルミート行列であり、\( B \) が半正定値であるとする。また、固有値列 \(\{\lambda_i(A)\}_{i=1}^n\) と \(\{\lambda_i(B)\}_{i=1}^n\) は (4.2.1) のように順序付けられているとする。

(4.2.1)
\lambda_{\min} = \lambda_1 \leq \lambda_2 \leq \cdots \leq \lambda_{n-1} \leq \lambda_n = \lambda_{\max} 

(4.2.6) を用いて、すべての \( k = 1, \ldots, n \) に対して次を示しなさい。

\lambda_k(A+B) \geq \lambda_k(A)

ヒント

クーラント=フィッシャーの定理の最小最大表示を用いる。特に、任意のベクトル \( x \) に対して \( x^*(A+B)x = x^*Ax + x^*Bx \) であることに注目し、\( B \) の寄与を評価する。

解答例

エルミート行列 \( A, B \in M_n \) を考える。クーラント=フィッシャーの定理より

\lambda_k(A)
=
\min_{\dim S = k}
\max_{\substack{x \in S \\ x \neq 0}}
\frac{x^*Ax}{x^*x}
\lambda_k(A+B)
=
\min_{\dim S = k}
\max_{\substack{x \in S \\ x \neq 0}}
\frac{x^*(A+B)x}{x^*x}

が成り立つ。

ここで任意の部分空間 \( S \) と \( x \in S \setminus \{0\} \) に対して

\frac{x^*(A+B)x}{x^*x}
=
\frac{x^*Ax}{x^*x}
+
\frac{x^*Bx}{x^*x}

である。

\( B \) はエルミート行列であるから、(4.2.2(c)) より \( \frac{x^*Bx}{x^*x} \geq \lambda_{\min}(B) \) が成り立つ。特に \( B \) が半正定値であれば \( \frac{x^*Bx}{x^*x} \geq 0 \) である。

したがって

\frac{x^*(A+B)x}{x^*x}
\geq
\frac{x^*Ax}{x^*x}

がすべての \( x \neq 0 \) に対して成立する。

よって任意の部分空間 \( S \) に対して

\max_{x \in S,\,x \neq 0}
\frac{x^*(A+B)x}{x^*x}
\geq
\max_{x \in S,\,x \neq 0}
\frac{x^*Ax}{x^*x}

が成り立つ。

両辺について \( \dim S = k \) の部分空間全体で最小値をとると

\lambda_k(A+B)
=
\min_{\dim S = k}
\max_{x \in S,\,x \neq 0}
\frac{x^*(A+B)x}{x^*x}
\geq
\min_{\dim S = k}
\max_{x \in S,\,x \neq 0}
\frac{x^*Ax}{x^*x}
=
\lambda_k(A)

が得られる。

以上より、すべての \( k = 1, \ldots, n \) に対して \( \lambda_k(A+B) \geq \lambda_k(A) \) が示された。

[行列解析4.2]変分的特徴づけと部分空間の交わり
この節の目次4.2.2 定理(レイリー)4.2.3 補題 4.2.3(部分空間の共通部分)4.2.4 補題4.2.5 観察4.2.6 定理 4.2.6(クーラント=フィッシャー)4.2.10 定理4.2.11 系4.2問題集P1P2P3P4...


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