[行列解析4.2.P5]非エルミート行列のレイリー商

4.エルミート行列、対称行列、合同行列

4.2.P5

4.2.問題5

\( A = \begin{bmatrix} 1 & 2 \\ 0 & 1 \end{bmatrix} \) とする。\( A \) の固有値は何か。また、次を求めよ。

\max \left\{ \tfrac{x^{\top} A x}{x^{\top} x} : 0 \neq x \in \mathbb{R}^2 \right\}
\max \Re \left\{ \tfrac{x^{*} A x}{x^{*} x} : 0 \neq x \in \mathbb{C}^2 \right\}

これは (4.2.2) と矛盾するかどうかを考察しなさい。

ヒント

まず固有値は三角行列の対角成分から求める。次にレイリー商 \( \frac{x^{\top}Ax}{x^{\top}x} \) を具体的に計算し、変数をおいて最大値を求める。複素の場合も同様に実部を計算し、最大値を評価する。

解答例

まず、行列 \( A = \begin{bmatrix} 1 & 2 \\ 0 & 1 \end{bmatrix} \) は上三角行列であるから、固有値は対角成分に一致し、 \( \lambda = 1 \)(重複度2) である。

次に、\( x = \begin{pmatrix} x_1 \\ x_2 \end{pmatrix} \in \mathbb{R}^2 \) とすると、

x^{\top}Ax = x_1^2 + 2x_1x_2 + x_2^2 = (x_1 + x_2)^2
x^{\top}x = x_1^2 + x_2^2

したがってレイリー商は

\frac{x^{\top}Ax}{x^{\top}x} = \frac{(x_1 + x_2)^2}{x_1^2 + x_2^2}

ここで \( x_1 = x_2 \neq 0 \) とすると、

\frac{(x_1 + x_2)^2}{x_1^2 + x_2^2}
= \frac{(2x_1)^2}{2x_1^2}
= 2

さらに一般に、\( x_2 = t x_1 \) とおくと

\frac{(1+t)^2}{1+t^2}

となり、これの最大値は 2 である。したがって

\max_{x \neq 0} \frac{x^{\top}Ax}{x^{\top}x} = 2

が得られる。

次に複素ベクトル \( x \in \mathbb{C}^2 \) に対しても同様に計算すると、

x^*Ax = |x_1|^2 + 2\overline{x_1}x_2 + |x_2|^2

したがって実部は \( \Re(x^*Ax) = |x_1|^2 + |x_2|^2 + 2\Re(\overline{x_1}x_2) \) であり、

\Re(x^*Ax) \leq (|x_1| + |x_2|)^2

となる。したがって同様の議論により最大値は 2 であり、

\max \Re \left\{ \frac{x^*Ax}{x^*x} \right\} = 2

が成り立つ。

最後に、固有値はすべて 1 であるにもかかわらず、レイリー商の最大値が 2 となっている。このことはレイリーの定理と矛盾しない。なぜならレイリーの定理はエルミート行列に対してのみ成立するが、この行列 \( A \) はエルミートではないからである。

[行列解析4.2]変分的特徴づけと部分空間の交わり
この節の目次4.2.2 定理(レイリー)4.2.3 補題 4.2.3(部分空間の共通部分)4.2.4 補題4.2.5 観察4.2.6 定理 4.2.6(クーラント=フィッシャー)4.2.10 定理4.2.11 系4.2問題集P1P2P3P4...


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