[行列解析3.3.P22]最小多項式の次数と階数の関係

3.標準形と三角因子分解

3.3.P22

3.3 問題22

\( A \in M_n \) とする。このとき \( A \) の最小多項式の次数は高々 \(\operatorname{rank} A + 1\) であることを説明せよ。

さらに、この上界が特異行列に対して最適であることを例によって示せ。すなわち、各 \( r = 1, \ldots, n-1 \) に対して、ある \( A \in M_n \) が存在し、\(\operatorname{rank} A = r\) かつ \( q_A(t) \) の次数が \( r+1 \) である。

ヒント

像空間 \( \operatorname{Im} A \) の次元は \( \operatorname{rank} A = r \) である。列ベクトル列 \( x, Ax, A^2x, \ldots \) は高々 \( r+1 \) 個で線形従属になることに注目する。これを用いて、ある次数 \( \le r+1 \) の多項式 \( p(t) \) が存在して \( p(A)=0 \) となることを示す。

解答例

\( A \in M_n \) とし、\( \operatorname{rank} A = r \) とする。任意のベクトル \( x \in \mathbb{C}^n \) に対して、列ベクトル列 \( x, Ax, A^2x, \ldots, A^{r+1}x \) を考える。

ここで \( Ax, A^2x, \ldots, A^{r+1}x \) はすべて像空間 \( \operatorname{Im} A \) に属するので、その次元は高々 \( r \) である。したがって、これら \( r+1 \) 個のベクトルは線形従属である。

ゆえに、ある係数 \( c_0, c_1, \ldots, c_{r+1} \)(少なくとも1つは0でない)が存在して

c_0 x + c_1 Ax + c_2 A^2x + \cdots + c_{r+1} A^{r+1}x = 0

が成り立つ。これは \( (c_0 I + c_1 A + \cdots + c_{r+1} A^{r+1})x = 0 \) と書ける。

この関係は任意の \( x \) に対して成立するので、

c_0 I + c_1 A + \cdots + c_{r+1} A^{r+1} = 0

すなわち、次数高々 \( r+1 \) の多項式 \( p(t) = c_0 + c_1 t + \cdots + c_{r+1} t^{r+1} \) が存在して \( p(A)=0 \) である。よって最小多項式 \( q_A(t) \) の次数は高々 \( r+1 \) である。

次に、この上界が最適であることを示す。\( r = 1, \ldots, n-1 \) に対し、サイズ \( r+1 \) の零固有値に対応するジョルダンブロック

J_{r+1}(0) =
\begin{bmatrix}
0 & 1 &        & 0 \\
  & 0 & \ddots &   \\
  &   & \ddots & 1 \\
0 &   &        & 0
\end{bmatrix}

を考える。さらに \( A = J_{r+1}(0) \oplus 0_{n-(r+1)} \) とする。

このとき \( A \) は冪零行列であり、その冪指数は \( r+1 \) であるから

A^{r+1} = 0, \quad A^r \neq 0

が成り立つ。したがって最小多項式は \( q_A(t) = t^{r+1} \) であり、その次数は \( r+1 \) である。

また、このとき階数は \( \operatorname{rank} A = r \) である。以上より、上界は特異行列に対して最適である。

[行列解析3.3]最小多項式とコンパニオン行列
3.3 この節の目次3.3.13.3.2 正方行列の最小多項式3.3.3 系3.3.4 系3.3.63.3.83.3.103.3.13 コンパニオン行列3.3.143.3.153.3問題集3.3.P13.3.P23.3.P33.3.P43....

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