3.2.P17
3.2問題17
\(A\in M_n\) とする。次を示せ:\(\mathrm{rank}\,A=\mathrm{rank}\,A^2\) であることは、固有値 \(\lambda=0\) の幾何的重複度と代数的重複度が等しいこと(すなわちジョルダン標準形中の \(\lambda=0\) に対応するジョルダンブロックがすべて \(1\times1\) であること)と同値である。また、\(A\) が対角化可能であることは、すべての \(\lambda\in\sigma(A)\) について \(\mathrm{rank}(A-\lambda I)=\mathrm{rank}(A-\lambda I)^2\) が成り立つことと同値であることを説明せよ。
ヒント
行列の階数は零空間の次元と関係する。すなわち \( \mathrm{rank}\,A = n-\dim\ker A \) である。同様に \(A^2\) についても \( \mathrm{rank}\,A^2 = n-\dim\ker A^2 \) が成り立つ。
したがって \( \mathrm{rank}\,A=\mathrm{rank}\,A^2 \) は \( \ker A = \ker A^2 \) と同値になる。この条件をジョルダン標準形で考えると、固有値 \(0\) に対応するジョルダンブロックのサイズに条件が現れる。
また \(A-\lambda I\) に対して同じ議論を適用すると、各固有値について零固有値のジョルダン構造が制限されることがわかり、それが対角化可能性と結びつく。
解答例
まず階数と核の次元の関係より \( \mathrm{rank}\,A=n-\dim\ker A \), \( \mathrm{rank}\,A^2=n-\dim\ker A^2 \) である。
したがって \( \mathrm{rank}\,A=\mathrm{rank}\,A^2 \) であることは
\ker A = \ker A^2
と同値である。
次に \(A\) のジョルダン標準形を考える。ある正則行列 \(P\) が存在して
A = PJP^{-1}
ただし \(J\) はジョルダン標準形である。核の次元は相似変換で不変なので、\(\ker A\) と \(\ker A^2\) の次元は \(J\) と \(J^2\) を調べればよい。
固有値 \(0\) に対応するジョルダンブロックを \(J_m(0)\) とする。このとき
J_m(0)=
\begin{pmatrix}
0 & 1 & & \\
& 0 & 1 & \\
& & \ddots & 1 \\
& & & 0
\end{pmatrix}
である。すると
J_m(0)^2=
\begin{pmatrix}
0 & 0 & 1 & \\
& 0 & 0 & 1 \\
& & \ddots & 0 \\
& & & 0
\end{pmatrix}
となる。
\(m=1\) のときは \(J_1(0)=0\) であり \(\ker J_1(0)=\ker J_1(0)^2\) である。
しかし \(m\ge2\) のときは、\(J_m(0)\) では核の次元が 1 であるのに対し、\(J_m(0)^2\) では核の次元が 2 以上になる。したがって
\ker J_m(0) \ne \ker J_m(0)^2
となる。
よって \( \ker A = \ker A^2 \) が成り立つのは、固有値 \(0\) に対応するジョルダンブロックがすべて \(1\times1\) の場合に限る。これは固有値 \(0\) の幾何的重複度と代数的重複度が一致することに等しい。
次に対角化可能性について考える。\(A\) が対角化可能であることは、すべての固有値に対してジョルダンブロックのサイズが 1 であることと同値である。
ここで各固有値 \( \lambda \) について行列 \(B=A-\lambda I\) を考えると、\(\lambda\) は \(B\) の固有値 0 に対応する。
したがって前半で示した結果を \(B\) に適用すると
\mathrm{rank}(A-\lambda I)
=
\mathrm{rank}(A-\lambda I)^2
が成り立つことは、固有値 \(\lambda\) に対応するジョルダンブロックがすべて \(1\times1\) であることと同値である。
これがすべての \( \lambda\in\sigma(A) \) について成り立つとき、すべてのジョルダンブロックが \(1\times1\) となるので \(A\) は対角化可能である。
以上より、\(A\) が対角化可能であることと すべての \( \lambda\in\sigma(A) \) について \( \mathrm{rank}(A-\lambda I)=\mathrm{rank}(A-\lambda I)^2 \) が成り立つことは同値である。
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