[行列解析3.1.P30]固有値1のみの行列とその冪の相似性

3.標準形と三角因子分解

3.1.P30

3.1問題30

\( A \in M_n \) の唯一の固有値が \( \lambda = 1 \) であるとする。

このとき、任意の \( k = 1, 2, \ldots \) に対して \( A \) が \( A^k \) に相似であることを示せ。

ヒント

行列 \(A\) の唯一の固有値が \(1\) であるとき、ジョルダン標準形は固有値 \(1\) をもつジョルダンブロックの直和になる。したがって \(A\) は \(J_{n_1}(1),\ldots,J_{n_q}(1)\) の直和に相似である。

ジョルダンブロックを \(J_m(1)=I+N\) と書くと、\(N\) は冪零行列である。二項定理を用いて \((I+N)^k\) を展開すると、上隣接対角成分が非零となることが分かる。このことから \(J_m(1)^k\) は再び \(J_m(1)\) に相似である。

したがって各ジョルダンブロックごとに同様の相似が成立し、結果として \(A\) は \(A^k\) に相似である。

解答例

\(A \in M_n\) の唯一の固有値が \(1\) であるとする。このときジョルダン標準形より、ある正則行列 \(S\) が存在して

A = SJS^{-1}

と書ける。ただし

J =
\begin{bmatrix}
J_{n_1}(1) & & \\
 & \ddots & \\
 & & J_{n_q}(1)
\end{bmatrix}

である。

したがって

A^k = SJ^kS^{-1}

が成り立つ。

ここでジョルダンブロックを

J_m(1) = I + N

と書く。ただし \(N\) は

N =
\begin{bmatrix}
0 & 1 & & \\
 & 0 & \ddots & \\
 & & \ddots & 1 \\
 & & & 0
\end{bmatrix}

であり、冪零行列である。

二項定理より

(I+N)^k
=
I + kN + \binom{k}{2}N^2 + \cdots

となる。この行列は上三角行列であり、対角成分はすべて \(1\) であり、さらに上隣接対角成分は

k \neq 0

である。

したがって前問の結果より

J_m(1)^k \sim J_m(1)

が成り立つ。

このことを各ジョルダンブロックに適用すると

J^k \sim J

が従う。

よって

A^k = SJ^kS^{-1} \sim SJS^{-1} = A

となる。

したがって任意の \(k=1,2,\ldots\) に対して \(A\) は \(A^k\) に相似である。


行列解析の総本山

総本山の目次📚

[行列解析]総本山📚
行列解析の総本山。行列解析の内容を網羅的かつ体系的に整理しています。線形代数の学習を一通り終えた方が、次のステップとして取り組むのに最適です。行列に関する不等式を研究するには、行列解析の知識が欠かせません。

記号の意味🔎

[行列解析9.0]主要な記号一覧🔎
行列解析で使用している記号や用語の簡単な説明です。

コメント

タイトルとURLをコピーしました