[行列解析3.1.P22]三重対角行列の固有値の実性と単純性

3.標準形と三角因子分解

3.1.P22

3.1問題22

\( A \in M_n(\mathbb{R}) \) が三重対角行列であるとする。

(a) もし \( a_{i,i+1} a_{i+1,i} \gt 0 \) が \( i = 1, \ldots, n-1 \) のすべてについて成り立つなら、\( A \) が n 個の異なる実固有値を持つことを示せ。

(b) もし \( a_{i,i+1} a_{i+1,i} \geq 0 \) が \( i = 1, \ldots, n-1 \) のすべてについて成り立つなら、\( A \) の固有値がすべて実数であることを示せ。

ヒント

対角直上成分と直下成分の積が正であれば、対角行列による相似変換によって対称三重対角行列に変換できることに注目する。

対称行列は固有値がすべて実数であり、さらに既約な場合は固有値が単純になる性質を用いる。

解答例

\( A \in M_n(\mathbb{R}) \) を三重対角行列とする。

(a) 仮定より \( a_{i,i+1} a_{i+1,i} \gt 0 \) がすべての \( i=1,\dots,n-1 \) で成り立つ。

このとき各 \( i \) について \( a_{i,i+1} \) と \( a_{i+1,i} \) は同符号である。そこで対角行列 \( D=\mathrm{diag}(d_1,\dots,d_n) \) を次のように定める。

d_1 = 1,\qquad
d_{i+1} = d_i \sqrt{\frac{a_{i,i+1}}{a_{i+1,i}}}

すると相似変換 \( B = D^{-1} A D \) を考えると、計算により

b_{i,i+1} = b_{i+1,i} = \sqrt{a_{i,i+1}a_{i+1,i}}

となる。よって \( B \) は実対称三重対角行列である。

実対称行列の固有値はすべて実数であり、さらに対角直下成分がすべて 0 でない既約三重対角行列は固有値がすべて単純である。

したがって \( B \) は \( n \) 個の異なる実固有値をもつ。相似変換は固有値を保存するので、\( A \) も \( n \) 個の異なる実固有値をもつ。

(b) 次に \( a_{i,i+1} a_{i+1,i} \ge 0 \) が成り立つ場合を考える。

同様に対角行列による相似変換を行うと、\( B=D^{-1}AD \) は実対称三重対角行列となる。ただし一部の成分は 0 となる可能性がある。

実対称行列の固有値はすべて実数であるから、\( B \) の固有値はすべて実数である。

相似変換は固有値を保存するので、\( A \) の固有値もすべて実数である。


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