[行列解析8.7.P10]2×2二重確率行列の構造に関する証明

8.正および非負行列

(8.7.P10)

問題

2×2 の二重確率行列は対称であり、対角要素が等しいことを示せ。

解答例

\( 2 \times 2 \) の行列 \( A \) が二重確率行列であるための条件を考察する。

1. 二重確率行列の一般形

一般の \( 2 \times 2 \) 行列を

A = \begin{pmatrix} a & b \\ c & d \end{pmatrix}

とする。\( A \) が二重確率行列であるための条件は以下の通りである。

  1. 非負性: \( a \ge 0, b \ge 0, c \ge 0, d \ge 0 \)
  2. 行和が 1: a + b = 1 … (1) , c + d = 1  … (2)
  3. 列和が 1: a + c = 1 … (3) , b + d = 1  … (4)

2. 対角要素が等しいことの証明

式 (1) と 式 (3) を用いる。
式 (1) より \( b = 1 - a \) である。
式 (3) より \( c = 1 - a \) である。
これらを式 (4) に代入すると、

(1 - a) + d = 1

となり、整理すると \( d = a \) が得られる。

したがって、対角要素は \( a = d \) であり、等しいことが示された。

3. 対称であることの証明

行列 \( A \) が対称であるとは、\( A_{ij} = A_{ji} \)、すなわち \( b = c \) が成り立つことである。

上記 2. で得られた結果 \( b = 1 - a \) と \( c = 1 - a \) より、直ちに \( b = c \) が成り立つ。

したがって、\( 2 \times 2 \) の二重確率行列 \( A \) は、

A = \begin{pmatrix} a & 1-a \\ 1-a & a \end{pmatrix}

という一般形で表され、これは対称行列であり、対角要素が等しいことが示された。

なお、非負性の条件から \( 0 \le a \le 1 \) でなければならない。


行列解析の総本山

総本山の目次📚

[行列解析]総本山📚
行列解析の総本山。行列解析の内容を網羅的かつ体系的に整理しています。線形代数の学習を一通り終えた方が、次のステップとして取り組むのに最適です。行列に関する不等式を研究するには、行列解析の知識が欠かせません。

記号の意味🔎

[行列解析9.0]主要な記号一覧🔎
行列解析で使用している記号や用語の簡単な説明です。

コメント

タイトルとURLをコピーしました