[行列解析7.7.6]補題:行列の収縮性と半正定値性の関係

7.7.6 補題:行列の収縮性と半正定値性の関係

この補題では、行列 \(X \in M_{p,q}\) によって構成されるブロック行列が、正定値または半正定値であるための条件を示す。特に、行列の「収縮(contraction)」および「厳密な収縮(strict contraction)」との関係を明らかにする。

補題 7.7.6

\(X \in M_{p,q}\) とし、次のようなブロック行列 \(K\) を定める:

K = \begin{bmatrix}
I_p & X \\
X^{*} & I_q
\end{bmatrix}
\in M_{p+q}.

このとき、次が成り立つ。

(a) \(K\) が正定値であるのは、\(X\) が厳密な収縮(すなわち、\(\sigma_1(X) \lt 1\))であるとき、かつそのときに限る。
(b) \(K\) が半正定値であるのは、\(X\) が収縮(すなわち、\(\sigma_1(X) \le 1\))であるとき、かつそのときに限る。

証明

恒等式 (7.7.5) および (7.7.2(d)) より、

\begin{bmatrix}
I_p & X \\
X^{*} & I_q
\end{bmatrix}
\succeq 0
\quad \Longleftrightarrow \quad
I_q - X^{*}X \succeq 0
\quad \Longleftrightarrow \quad
\sigma_1(X) \lt 1

である。したがって、(a) の主張が示される。(b) の主張も同様の議論により従う。


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