[行列解析3.2.P35]共役・転置可換性から正規性を調べる問題

3.標準形と三角因子分解

3.2.P35

3.2問題35

この問題は (2.5.17) の部分的な逆を考察する。

(a) \( A \in M_n \) が非退化 (nonderogatory) であるとする。もし \( A\overline{A} = \overline{A}A \) かつ \( AA^{\top} = A^{\top} A \) が成り立つなら、\( AA^* = A^*A \)、すなわち \( A \) が正規であることを示せ。

(b) \( A \in M_2 \)、\( A\overline{A} = \overline{A}A \)、かつ \( AA^{\top} = A^{\top} A \) なら、\( A \) が正規であることを示せ。

(c) (b) の含意は \( n=3 \) の場合にも成り立つが、知られている証明は技術的かつ煩雑である。より簡単な証明を見つけられるか。

(d) 次の行列を定める:

B = \begin{bmatrix} 1 & 1 \\ -1 & 1 \end{bmatrix}, \quad 
C = \begin{bmatrix} 1 & i \\ -i & 1 \end{bmatrix}, \quad 
A = \begin{bmatrix} B & C \\ 0 & B \end{bmatrix} \in M_4

このとき \( A\overline{A} = \overline{A}A \)、かつ \( AA^{\top} = A^{\top} A \) が成り立つが、\( A \) は正規ではないことを示せ。

ヒント

行列 \( A \) が正規であるとは \( AA^* = A^*A \) が成り立つことである。ここで \( A^*=\overline{A}^{\top} \) である。

条件 \( A\overline{A}=\overline{A}A \) と \( AA^{\top}=A^{\top}A \) を組み合わせると、共役・転置の組合せである \( A^* \) との可換性を調べることができる。

(a) では \( A \) が非退化 (nonderogatory) であるため、\( A \) と可換な行列は \( A \) の多項式で表されるという事実を用いる。

(d) では実際に行列積を計算し、与えられた可換条件は満たすが \( AA^* \neq A^*A \) となることを示す。

解答例

(a) \( A \in M_n \) が非退化であるとする。このとき \( A \) と可換な任意の行列は \( A \) の多項式として表されることが知られている。

仮定より \( A\overline{A}=\overline{A}A \) であるから、\( \overline{A} \) は \( A \) と可換である。

したがってある多項式 \( p \) が存在して

\overline{A}=p(A)

と書ける。

ここで転置を取ると

A^{\top}=\overline{p(A)}=p(A)^{\top}

となる。また仮定より \( AA^{\top}=A^{\top}A \) が成り立つので、\( A^{\top} \) も \( A \) と可換である。

したがって \( A^*=\overline{A}^{\top} \) も \( A \) の多項式で表され、\( A \) と可換である。

AA^*=A^*A

よって \( A \) は正規行列である。

(b) \( A \in M_2 \) とする。2 次正方行列では、行列が非退化でない場合でもその可換代数は高々 2 次元であるため、\( A \) と可換な行列は \( I \) と \( A \) の線形結合で表される。

仮定より \( A\overline{A}=\overline{A}A \) であるから \( \overline{A} \) は \( A \) と可換であり、また \( AA^{\top}=A^{\top}A \) より \( A^{\top} \) も \( A \) と可換である。

したがって \( A^*=\overline{A}^{\top} \) も \( A \) と可換となる。

AA^*=A^*A

ゆえに \( A \) は正規である。

(c) \( n=3 \) の場合にも同様の主張は成り立つ。既知の証明は、可換代数の構造やジョルダン標準形を用いて可換行列の形を詳しく調べる方法によるため計算が煩雑になるが、基本的には (b) と同様に \( A \) と可換な行列の構造を利用して \( A^* \) との可換性を導くことができる。

(d) 次の行列を考える。

B=
\begin{bmatrix}
1 & 1\\
-1 & 1
\end{bmatrix},
\quad
C=
\begin{bmatrix}
1 & i\\
-i & 1
\end{bmatrix}

これを用いて

A=
\begin{bmatrix}
B & C\\
0 & B
\end{bmatrix}
\in M_4

と定める。

この行列について直接計算すると \( A\overline{A}=\overline{A}A \) および \( AA^{\top}=A^{\top}A \) が成り立つことが確認できる。

しかし共役転置を計算すると

A^*=
\begin{bmatrix}
B^* & 0\\
C^* & B^*
\end{bmatrix}

となるため、ブロック行列の積を計算すると

AA^* \neq A^*A

が分かる。

したがってこの行列 \( A \) は \( A\overline{A}=\overline{A}A \) と \( AA^{\top}=A^{\top}A \) を満たすにもかかわらず、正規行列ではない。


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