[行列解析7.7.15]定理:正定値行列の部分逆行列

7.7.15 正定値行列の部分逆行列

定理 7.7.15

H ∈ M_n を正定値行列とし、α ⊂ {1, …, n} とする。このとき次が成り立つ:

H^{-1}[α] \succeq (H[α])^{-1}

証明

正定値行列の置換合同行列は正定値であるため、H を次のブロック行列と仮定してよい:

H = \begin{bmatrix} A & B \\ B^* & C \end{bmatrix}, \quad 
α = \{1, \dots, k\}, \quad H[α] = A

恒等式 (0.7.3.1) により次が成り立つ:

H^{-1}[α] = (A - B C^{-1} B^*)^{-1} = (A - B^* C^{-1} B)^{-1} \succeq 0

さらに、A \succeq A - B^* C^{-1} B \succeq 0 および (7.7.4(a)) により、次が成り立つ:

(A - B^* C^{-1} B)^{-1} \succeq A^{-1}

したがって H^{-1}[α] = (A - B^* C^{-1} B)^{-1} \succeq A^{-1} = (H[α])^{-1} である。

演習

A = [a_{ij}] ∈ M_n を正定値行列とし、A^{-1} = [α_{ij}] とする。前の定理から、各 i = 1, …, n に対して次が成り立つことを導け:

α_{ii} \ge \frac{1}{a_{ii}}

(7.7.9(b)) を用いることで、いくつかの 2×2 ブロック行列の正(半)定値行列を構成することができる。


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