7.4.問題3
7.4.P3
グリューブ=ラインボルト不等式
次に、2つの行列に対する (7.4.12.1) の一般化を示す。\( B, C \in M_n \) が可換な正定値行列であり、それぞれの固有値が \( 0 \lt \lambda_1 \le \cdots \le \lambda_n \)、および \( 0 \lt \mu_1 \le \cdots \le \mu_n \) であるとする。このとき、グリューブ=ラインボルト不等式は次を主張する。
(7.4.12.11)
(x^* B^2 x)(x^* C^2 x)
\le
\frac{(\lambda_1 \mu_1 + \lambda_n \mu_n)^2}{4 \lambda_1 \lambda_n \mu_1 \mu_n}
(x^* B C x)^2, \quad \forall x \in \mathbb{C}^n
同値な形として、次の式も成り立つ。
(7.4.12.12)
\frac{ \langle Bx, Cx \rangle }{ \|Bx\| \, \|Cx\| }
\ge
\frac{ 2 \sqrt{ \lambda_1 \lambda_n \mu_1 \mu_n } }{ \lambda_1 \mu_1 + \lambda_n \mu_n },
\quad \forall x \ne 0, \, x \in \mathbb{C}^n
ただし、カントロヴィッチ不等式とは異なり、\( B \) も \( C \) もスカラー行列でない場合、この不等式が等号となる単位ベクトル \( x \) は必ずしも存在しない。
- (a) 式 (7.4.12.11) を証明せよ。
- (b) \( B \) または \( C \) のいずれか一方がスカラー行列である場合、(7.4.12.12) において等号が成立することを示せ。
- (c) 可換な正定値行列 \( B \) および \( C \) のどのような選択で (7.4.12.11) が (7.4.12.1) に帰着するかを示せ。
- (d) \( B, C, x \) が実数の場合、(7.4.12.12) を幾何学的に解釈せよ。すなわち、ベクトル \( Bx \) と \( Cx \) のなす小さい角度の余弦の下限(または角度の上限)として解釈せよ。
行列解析の総本山

[行列解析]総本山
行列解析の総本山。行列解析の内容を網羅的かつ体系的に整理しています。線形代数の学習を一通り終えた方が、次のステップとして取り組むのに最適です。行列に関する不等式を研究するには、行列解析の知識が欠かせません。


コメント