ノルムの同値性と有限次元空間における収束の特徴
ノルムの同値性の定義
実または複素ベクトル空間上の2つのノルムが同値であるとは、あるベクトル列 \(\{x^{(k)}\}\) があるノルムに関してベクトル \(x\) に収束するとき、他方のノルムに関しても同じベクトル \(x\) に収束することをいう。
有限次元空間における収束の特徴
系 5.4.6 によれば、有限次元の実または複素ベクトル空間では、すべてのノルムは同値である。
しかし、例 5.4.2 が示すように、無限次元空間においては事情が大きく異なる。
特に、\(\mathbb{R}^n\) や \(\mathbb{C}^n\) 上のすべてのノルムは \(\lVert \cdot \rVert_{\infty}\) に同値である。
このため、ベクトル列 \(x^{(k)} = [x_i^{(k)}]_{i=1}^n\) に対して、任意のノルムに関して \(\lim_{k \to \infty} x^{(k)} = x\) が成り立つのは、各成分ごとに \(\lim_{k \to \infty} x_i^{(k)} = x_i\) が成り立つ場合に限られる。
さらに重要な事実として、\(\mathbb{R}^n\) や \(\mathbb{C}^n\) 上の任意のプレノルムまたはノルムに関して、単位球や単位球面は常にコンパクトである。
その結果、これらの集合上で定義された実数値あるいは複素数値の連続関数は必ず有界となる。特に実数値関数の場合、その最大値と最小値が存在する。
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