[行列解析5.4.17]定理:ノルムとその双対ノルムの関係

5.4.17

定理 5.4.17. \( V = F^n \)(\( F = \mathbb{R} \) または \( \mathbb{C} \))上のノルム \( \|\cdot\| \) が与えられ、定数 \( c > 0 \) が与えられたとする。このとき、任意の \( x \in V \) に対して \( \|x\| = c \|x\|^D \) が成り立つのは、\(\|\cdot\| = \sqrt{c} \|\cdot\|_2 \) の場合に限る。特に、\(\|\cdot\| = \|\cdot\|^D\) が成り立つのは、\(\|\cdot\| = \|\cdot\|_2\) の場合に限る。

証明:\(\|\cdot\| = \sqrt{c} \|\cdot\|_2\) で \( x \in V \) のとき、補題 5.4.16(a) より \(\|\cdot\|^D = \sqrt{1/c} \|\cdot\|_2 = c^{-1} \|\cdot\|\) が成り立つ。逆に、ノルム \( N(x) = c^{-1/2} \|x\| \) を考えると、仮定 \(\| \cdot \| = c \| \cdot \|^D\) により \( N^D(\cdot) = c^{1/2} \| \cdot \|^D = c^{1/2} c^{-1} \| \cdot \| = c^{-1/2} \| \cdot \| = N(\cdot) \) となり、\( N(\cdot) \) は自己双対である。補題 5.4.13 より、任意の \( x \in V \) に対して \(\|x\|_2^2 = |x^* x| \le N(x) N^D(x) = N(x)^2\) が成り立つ。つまり、全ての \( x \in V \) に対して \(\|x\|_2 \le N(x)\)。さらに、補題 5.4.16(b) より \(\|x\|_2 \ge N(x)\) なので、\(\|\cdot\|_2 = N(\cdot)\) が従う。

また、任意の k-ノルムおよび l_p-ノルム(\(R^n\) または \(C^n\) 上)は、ベクトルのノルムが各成分の絶対値のみに依存し、その絶対値に対して非減少関数であるという性質を持つ。これら二つの性質は互いに関連している。


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