[行列解析4.1.P29]不定行列と固有値の符号の関係

4.エルミート行列、対称行列、合同行列

4.1.P29

4.1.問題29

\(A \in M_n\) がエルミートまたは実対称行列であるとする。\(A\) が不定(indefinite)であることは、少なくとも1つの正の固有値と少なくとも1つの負の固有値を持つことと同値である理由を説明せよ。

ヒント

エルミート(または実対称)行列はユニタリ(または直交)対角化でき、二次形式 \(x^*Ax\) は固有値を用いて表せる。不定とは、この値が正にも負にもなりうることを意味するので、固有値の符号と対応づけて考える。

解答例

\(A \in M_n\) をエルミート行列(実対称行列の場合も同様)とする。このとき、あるユニタリ行列 \(U\) が存在して

A = U \Lambda U^*

と対角化できる。ここで \(\Lambda = \operatorname{diag}(\lambda_1, \ldots, \lambda_n)\) は実固有値からなる対角行列である。

任意の \(x \in \mathbb{C}^n\) に対し、\(y = U^*x\) とおくと

x^* A x = y^* \Lambda y = \sum_{i=1}^n \lambda_i |y_i|^2

が成り立つ。

まず、\(A\) が不定であるとする。すなわち、ある \(x\) に対して \(x^*Ax > 0\)、別の \(x\) に対して \(x^*Ax < 0\) となる。このとき上式より、係数 \(\lambda_i\) の中に正のものと負のものが少なくとも1つずつ存在しなければならない。

逆に、固有値の中に正のものと負のものが存在するとする。すなわち、ある \(i,j\) に対して \(\lambda_i > 0\)、\(\lambda_j < 0\) とする。このとき、\(y\) を標準基底ベクトル \(e_i\)、\(e_j\) にとれば

y = e_i \Rightarrow y^* \Lambda y = \lambda_i > 0,
\quad
y = e_j \Rightarrow y^* \Lambda y = \lambda_j < 0

となる。したがって、対応する \(x = Uy\) に対して \(x^*Ax\) は正にも負にもなり、\(A\) は不定である。

以上より、\(A\) が不定であることは、少なくとも1つの正の固有値と少なくとも1つの負の固有値を持つことと同値である。

[行列解析4.1]エルミート行列の性質と特徴 (Properties and characterizations of Hermitian matrices)
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