[行列解析3.3.P3]冪等行列と三冪等行列の対角化可能性

3.標準形と三角因子分解

3.3.P3

3.3.問題3

(3.3.10) を用いて、任意の射影行列(冪等行列)が対角化可能であることを示せ。

\( A \) の最小多項式は何か。

また、もし \( A \) が三冪等行列(\( A^3 = A \))であれば何が言えるか。

さらに、もし \( A^k = A \) が成り立つならばどうか。

(3.3.10)系

\( A \in M_n \) とし、その最小多項式を \( q_A(t) \) とする。このとき次の条件は同値である。

(a) \( q_A(t) \) が互いに異なる一次因子の積である。
(b) \( A \) のすべての固有値は \( q_A(t) = 0 \) の根として重複度 1 をもつ。
(c) すべての固有値 \( \lambda \) に対して \( q_A'(\lambda) \neq 0 \) である。
(d) \( A \) は対角化可能である。

ヒント

(3.3.10) の系より、最小多項式 \( q_A(t) \) が重複しない一次因子の積であれば行列 \( A \) は対角化可能である。

冪等行列では \( A^2=A \) が成り立つので、最小多項式は多項式 \( t^2-t \) を割り切る。三冪等行列では \( A^3=A \) を利用して最小多項式を考える。同様に \( A^k=A \) の場合も多項式関係から最小多項式の形を調べる。

解答例

まず (3.3.10) の系より、行列 \( A \) の最小多項式 \( q_A(t) \) が重複しない一次因子の積であれば、\( A \) は対角化可能である。

まず \( A \) が冪等行列、すなわち \( A^2=A \) を満たすとする。このとき

A^2-A=0

が成り立つので、\( A \) の最小多項式 \( q_A(t) \) は

t^2-t=t(t-1)

を割り切る。

この多項式は互いに異なる一次因子の積であるため、(3.3.10) の系より \( A \) は対角化可能である。したがって冪等行列の固有値は \( 0 \) または \( 1 \) である。

次に \( A \) が三冪等行列、すなわち \( A^3=A \) を満たすとする。このとき

A^3-A=0

が成り立つので、最小多項式は

t^3-t=t(t-1)(t+1)

を割り切る。

この多項式も互いに異なる一次因子の積であるため、(3.3.10) の系より \( A \) は対角化可能である。したがって固有値は \( 0,1,-1 \) のいずれかである。

さらに一般に \( A^k=A \) が成り立つとする。このとき

A^k-A=0

であるから、最小多項式は

t^k-t=t(t^{k-1}-1)

を割り切る。

ここで

t^{k-1}-1=\prod_{j=0}^{k-2}(t-e^{2\pi i j/(k-1)})

と因数分解できるので、すべて互いに異なる一次因子である。

したがって (3.3.10) の系より、この場合も \( A \) は対角化可能である。固有値は \( 0 \) または \( (k-1) \) 次単位根 である。


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