[行列解析4.4.P5]複素対称行列と転置へのユニタリ相似

4.エルミート行列、対称行列、合同行列

4.4.P5

4.4.問題5

行列 \(A \in M_n\) とする。

(a) (2.5.20(a)) を用いて、\(A\) が複素対称行列にユニタリ相似であることと、
対称ユニタリ行列によって \(A\) が \(A^T\) に相似であることは同値であることを示せ。

(b) \(A\) が \(A^T\) にユニタリ相似で \(n \in \{2, \dots, 7\}\) の場合、
\(A\) は複素対称行列にユニタリ相似であるが、\(n=8\) の場合はそうではない。

参照: S. R. Garcia and J. E. Tener, Unitary equivalence of a matrix to its transpose, J. Operator Theory 68 (2012) 179–203。

(c) しかし、\(A \oplus A^T\) は常に自分の転置にユニタリ相似である。

次の行列を用いて証明せよ:

\begin{pmatrix} 0 & I \\ I & 0 \end{pmatrix}

ヒント

(2.5.20(a)) のタカギ分解を用いると、対称ユニタリ行列はあるユニタリ行列 \(U\) を用いて \(S=UU^{\top}\) と表せる。

(a) はこの表示を利用して示す。

(c) は与えられた置換行列による相似変換を直接計算すればよい。

解答例

(a)

まず、\(A\) が複素対称行列 \(B\) にユニタリ相似であると仮定する。

A=UBU^{*},
\qquad
B=B^{\top}.

このとき、

A^{\top}
=
\overline{U}BU^{\top}.

よって、対称ユニタリ行列

S=UU^{\top}

を用いると、

S^{*}AS
=
A^{\top}

となる。

逆に、対称ユニタリ行列 \(S\) が存在して

S^{*}AS=A^{\top}

とする。(2.5.20(a)) より、あるユニタリ行列 \(U\) が存在して

S=UU^{\top}

と書ける。ここで

B=U^{*}AU

とおくと、

B^{\top}
=
U^{\top}A^{\top}\overline{U}
=
U^{\top}S^{*}AS\overline{U}
=
U^{*}AU
=
B.

したがって \(B\) は複素対称行列であり、\(A\) は複素対称行列にユニタリ相似である。

(b)

Garcia と Tener の結果によれば、\(2\leq n\leq7\) では、\(A\) が \(A^{\top}\) にユニタリ相似であるならば、\(A\) は必ず複素対称行列にユニタリ相似である。

しかし、\(n=8\) では、この性質は一般には成り立たず、\(A\) は \(A^{\top}\) にユニタリ相似であっても、複素対称行列にユニタリ相似とは限らない反例が存在する。

(c)

次のユニタリかつ対称な置換行列を考える。

P
=
\begin{pmatrix}
0&I\\
I&0
\end{pmatrix}.

\(P=P^{*}=P^{-1}\) であるから、

P(A\oplus A^{\top})P
=
A^{\top}\oplus A.

一方、

(A\oplus A^{\top})^{\top}
=
A^{\top}\oplus A.

したがって、

P(A\oplus A^{\top})P
=
(A\oplus A^{\top})^{\top}.

ゆえに、\(A\oplus A^{\top}\) は常に自分の転置にユニタリ相似である。

[行列解析4.4]ユニタリ合同と複素対称行列
この節の目次4.4.2 補題4.4 ユニタリ合同と複素対称行列複素エルミート行列と複素対称行列は、ともに複素平面における単位円板の解析写像の研究に現れる。もし \( f \) が単位円板上の複素解析関数で、正規化条件 \( f(0) = 0...


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