[行列解析4.1.P12]エルミート行列と階数・固有値

4.エルミート行列、対称行列、合同行列

4.1.P12

4.1.問題12

\(A \in M_n\) が与えられたとき、\(A\) がエルミートならば、\(\mathrm{rank}\,A\) は非零固有値の数に等しいことを説明せよ。

ただし、非エルミート行列では必ずしも成り立たない。

\(A\) が正規行列ならば \(\mathrm{rank}\,A \ge \mathrm{rank}\,H(A)\) であり、等号成立は A が非零の虚固有値を持たないときに限る。

正規性の仮定は省略できるか?

ヒント

エルミート行列はユニタリ対角化でき、固有値はすべて実数である。このとき、階数はゼロでない固有値の個数に一致することを、対角化された形で考えるとよい。また、\(H(A)=\frac{1}{2}(A+A^*)\) に注目し、正規行列では同時対角化が可能であることを用いる。

解答例

まず、\(A\) がエルミートであるとする。このとき、あるユニタリ行列 \(U\) が存在して

U^*AU = \mathrm{diag}(\lambda_1, \dots, \lambda_n)

と対角化できる。ここで各 \(\lambda_i\) は実数である。

行列の階数はユニタリ相似で不変であるから、

\mathrm{rank}\,A = \mathrm{rank}\,\mathrm{diag}(\lambda_1,\dots,\lambda_n)

である。対角行列の階数は、対角成分のうちゼロでないものの個数に等しいので、

\mathrm{rank}\,A = \#\{i : \lambda_i \ne 0\}

すなわち、非零固有値の個数に一致する。

一方、一般の行列ではジョルダン標準形において非零固有値に対応するブロックがあっても、零固有値に対応するジョルダンブロックが階数に影響するため、この一致は必ずしも成り立たない。

次に、\(A\) が正規行列であるとする。このとき、あるユニタリ行列 \(U\) により

U^*AU = \mathrm{diag}(\lambda_1,\dots,\lambda_n)

と対角化できる。ここで

H(A) = \frac{1}{2}(A + A^*)

に対しても同じ \(U\) により

U^*H(A)U = \mathrm{diag}(\mathrm{Re}\,\lambda_1,\dots,\mathrm{Re}\,\lambda_n)

となる。したがって

\mathrm{rank}\,A = \#\{i : \lambda_i \ne 0\}, \quad
\mathrm{rank}\,H(A) = \#\{i : \mathrm{Re}\,\lambda_i \ne 0\}

より、明らかに \( \mathrm{rank}\,A \ge \mathrm{rank}\,H(A) \) が成り立つ。

等号が成り立つのは、\(\lambda_i \ne 0\) のとき必ず \(\mathrm{Re}\,\lambda_i \ne 0\) が成り立つ場合、すなわち非零固有値が純虚数を持たない場合に限る。

最後に、正規性の仮定は一般には省略できない。正規でない行列ではユニタリ対角化ができず、\(A\) と \(H(A)\) を同時に対角化できないため、上記の固有値による比較が成立しないからである。

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