[行列解析3.1.P3]実固有値をもつ複素行列の実相似性

3.標準形と三角因子分解

3.1.P3

3.1問題3

\(A \in M_n\) が非実成分を含むが、固有値は実数のみであるとする。\(A\) が実行列と相似であることを示しなさい。

相似を与える行列を実行列に選べる場合はあるか。

ヒント

固有値がすべて実数であるならば、\(A\) のジョルダン標準形は実数のみからなるブロックで構成される。

すなわち、各ジョルダンブロック \(J_k(\lambda)\) の対角成分 \(\lambda\) は実数である。このときジョルダン標準形そのものは実行列になることに注目する。

また、相似変換行列を実行列に選べるかどうかは、固有空間に実基底を取れるかどうか、すなわち各ジョルダン鎖を実ベクトルで構成できるかに依存する。

解答例

\(A \in M_n(\mathbb{C})\) が非実成分を含むが、固有値はすべて実数であるとする。このとき \(A\) の特性多項式は実係数とは限らないが、その根はすべて実数である。

まず、\(A\) のジョルダン標準形を考える。複素数体上では、ある可逆行列 \(P \in GL_n(\mathbb{C})\) が存在して

P^{-1} A P = J

となる。ただし \(J\) はジョルダン標準形であり、各ブロックは

J_k(\lambda)
=
\begin{bmatrix}
\lambda & 1 &        & 0 \\
        & \lambda & \ddots &   \\
        &        & \ddots & 1 \\
0       &        &        & \lambda
\end{bmatrix}

の形をしている。仮定よりすべての固有値 \(\lambda\) は実数である。したがって各ジョルダンブロックは実数成分のみからなり、ジョルダン標準形 \(J\) 全体も実行列である。

ゆえに \(A\) は実行列 \(J\) と複素数体上で相似である。したがって「\(A\) は実行列と相似である」ことが示された。

次に、相似変換行列を実行列に選べるかを考える。もし \(A\) の各固有空間に実ベクトルからなるジョルダン鎖を取ることができれば、基底を実ベクトルで構成できるので、相似変換行列 \(P\) を実行列に取ることができる。

しかし一般には、固有値が実であっても固有ベクトルが実ベクトルとして取れるとは限らない。したがって常に相似変換行列を実行列に選べるとは限らないが、固有空間に実基底が存在する場合には実行列として選ぶことができる。


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