8.2.問題16
8.2.P16
\( A \in M_n \) が正の行列であり、\( x \in \mathbb{R}^n \) が \( A \) の非負で零でない固有ベクトルであるとする。
このとき、(1.4.P6)および双直交性の原理に基づき、\( x \) が \( A \) の固有値 \( \lambda = \rho(A) \) 以外に対応する固有ベクトルにはなりえない理由を説明せよ。
また、なぜ \( x \) は正のベクトルでなければならないのかを説明せよ。
この問題はペロン=フロベニウスの定理の核心部分に関係している。すなわち、正の行列 \( A \) に対して、最大固有値 \( \rho(A) \)(ペロン根)は一意であり、それに対応する固有ベクトルは全ての成分が正であることが知られている。
もし \( x \) が \( A \) の他の固有値 \( \lambda \ne \rho(A) \) に対応する固有ベクトルであれば、双直交性の原理(biorthogonality principle)より、左固有ベクトルとの内積が零になる必要がある。
しかし \( A \) が正の行列であり、\( x \) が非負ベクトルであるならば、そのような直交は成立しない。
したがって、\( x \) は必ず \( \lambda = \rho(A) \) に対応する固有ベクトルでなければならない。
さらに、\( x \) のすべての成分が正である必要がある。
なぜなら、\( A \) が正の行列であるため、\( A x \) の各成分は \( x \) の非零成分を通じてすべて正となり、固有方程式 \( A x = \rho(A) x \) から、もし \( x \) に零の成分があれば等式が成り立たなくなるためである。
したがって、\( x \) は正のベクトルでなければならない。
行列解析の総本山



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