[行列解析8.2.8]定理(ペロンの定理):正行列のスペクトル半径と固有構造

8.2.8 定理(ペロンの定理)正行列のスペクトル半径と固有構造

\( A \in M_n \) が正行列であるとする。このとき、次の性質が成り立つ。

(a) \( \rho(A) \gt 0 \)

(b) \( \rho(A) \) は \( A \) の代数的に単純な固有値である(すなわち代数的重複度が 1 である)。

(c) 実ベクトル \( x = [x_i] \) であって

A x = \rho(A) x, \quad x_1 + x_2 + \cdots + x_n = 1

を満たすものが一意に存在する。このベクトル \( x \) は正のベクトルである。

(d) 実ベクトル \( y = [y_i] \) であって

y^T A = \rho(A) y^T, \quad x_1 y_1 + x_2 y_2 + \cdots + x_n y_n = 1

を満たすものが一意に存在する。このベクトル \( y \) も正のベクトルである。

(e) \( A \) の任意の固有値 \( \lambda \) で \( \lambda \neq \rho(A) \) のものについて、

|\lambda| \lt \rho(A)

が成り立つ。

(f) \( m \to \infty \) のとき、次が成り立つ:

(\rho(A)^{-1} A)^m \to x y^T.

ここで \( x y^T \) は正の要素をもつ階数1の行列である。

ペロンの定理は、非常に多くの応用をもつ。たとえば、任意の複素正方行列に対して、 固有値の包含集合を与えることができる。この包含集合は、支配的な非負行列のスペクトル半径と 主対角成分によって決定される。


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