[行列解析8.2.4]定理:正の行列における固有値の絶対値の最大性

8.2.4 定理:正の行列における固有値の絶対値の最大性

\( A \in M_n \) が正の行列であるとする。もし \( \lambda \) が \( A \) の固有値であり、かつ \( \lambda \neq \rho(A) \) であるならば、

|\lambda| \lt \rho(A)

が成り立つ。

(証明)\( \lambda, x \) を \( A \) の固有ペアとすると、一般に \( |\lambda| \leq \rho(A) \) が成り立つ。もし \( |\lambda| = \rho(A) \) ならば、補題 (8.2.3) より、ある実数 \( \theta \in \mathbb{R} \) が存在して、

w = e^{-i\theta}x \gt 0

が成り立つ。ここで \( Aw = \lambda w \) かつ \( w \gt 0 \) なので、(8.1.30) より \( \lambda = \rho(A) \) が導かれる。ゆえに、\( \lambda \neq \rho(A) \) のとき、\( |\lambda| \lt \rho(A) \) が成立する。

したがって、正の行列 \( A \) においては、スペクトル半径 \( \rho(A) \) が絶対値の最も大きい固有値であることがわかる。では、次にこの \( \rho(A) \) の幾何的・代数的重複度について、どのような性質が言えるだろうか。


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