6.2.8
定理6.2.8(改良された定理).\(A \in M_n\) とし,\(\lambda, x = [x_i]\) を \(A\) の固有値・固有ベクトルの組とする。ここで \(\lambda\) は不等式 (6.2.2a) を満たしていると仮定する。もし \(A\) が性質SC(Strong Connectivity)をもつならば,次の2つが成り立つ。
(a) すべてのゲルシュゴリン円が \(\lambda\) を通る。
(b) 各 \(i = 1, \dots, n\) に対して \(\lvert x_i \rvert = \|x\|_\infty\) が成り立つ。
証明
\(|x_p| = \|x\|_\infty\) を満たす添字 \(p \in \{1, \dots, n\}\) を1つ選ぶ。(6.2.3a) より、次が成り立つ。
\lvert \lambda - a_{pp} \rvert = R_p, \quad \text{ただし} \quad R_p = \sum_{j \ne p} \lvert a_{pj} \rvert
したがって、第 \(p\) のゲルシュゴリン円は \(\lambda\) を通る。次に、\(q \in \{1, \dots, n\}\) のうち \(q \ne p\) となる任意の添字を取る。行列 \(A\) が性質SCをもつため、異なる添字の列
k_1 = p, \; k_2, \; \dots, \; k_m = q
が存在し、そのとき各成分 \(a_{k_1 k_2}, a_{k_2 k_3}, \dots, a_{k_{m-1}k_m}\) はすべてゼロでない。
まず \(a_{k_1 k_2} \ne 0\) であることから、(6.2.3b) により \(|x_{k_2}| = \|x\|_\infty\) が成り立つ。また (6.2.3a) により、
\lvert \lambda - a_{k_2 k_2} \rvert = R_{k_2}
が成り立つ。この過程を繰り返すことで、各 \(i = 2, \dots, m\) に対して次が導かれる。
\lvert x_{k_i} \rvert = \|x\|_\infty, \quad \lvert \lambda - a_{k_i k_i} \rvert = R_{k_i}
特に \(i = m\) の場合、すなわち \(k_m = q\) のとき、第 \(q\) のゲルシュゴリン円は \(\lambda\) を通り、さらに \(|x_q| = \|x\|_\infty\) が成り立つ。
(6.2.6) の場合と同様に、この結果から非特異性に関する有用な十分条件を導くことができる。
行列解析の総本山

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